不思議な話

【トランプとプーチンの昔話】アメリカで暗躍するロシアンマフィアたち

2024年、待ちに待ったアメリカ大統領選挙がおこなわれる。

前回の選挙で失意に暮れた者、バイデンに呆れ、不満を募らせている人々はきっと待ちくたびれていることだろう。

それはさておき、ここに「2016年アメリカ合衆国大統領選挙」にまつわる昔話がある。

トランプを大統領に担ぎ上げたのはロシア政府とマフィアだとか、ヒラリークリントンを排除したのは実は民主党自身だとかの懐かしい噂話だ。

元空軍パイロット ダヴィド・ボガティン

1984年、プーチンがまだKGB(旧ソ連の政治警察・国家保安委員会)にいた頃。

元空軍パイロットのダヴィド・ボガティンという貧相なロシア人がニューヨーク5番街にあるトランプタワーにやってくると、タワー内にある残り263戸のうちの数部屋を買いたいと申し出た。

この時トランプは珍しく自ら商談に参加したが、とてもお金持ちには見えない男が5戸も買うと言って600万ドル(約9億円)をテーブルの上に置いた時も、まったく驚かなかった。

ロシアのマフィアが不法に得た利益を洗浄するマネーロンダリングの目的でアメリカの高級住宅に引っ越してくることは無論承知だったのだろう。トランプはただうなずき取引は成立した。

その3年後、ロシアのマフィアが計画したガスと石油の大量密輸に関与したボガティンは逃亡すると、アメリカ当局はボガティンが所有していたトランプタワーの5戸を没収した。すでに汚い金で購入されていたことを知っていたのだ。

過去30年でトランプタワーの居住者10人以上がロシアのマフィアと密接なつながりがあることが判っており、ボガティンがロシアマフィアのドン、セミオン・モギレヴィッチ(ユダヤ系ウクライナ人)の右腕だということも判明した。

元ロシア諜報員 アレキサンドル・リトヴィネンコ

2005年、ロンドンに亡命した元ロシアのエージェント、アレキサンドル・リトヴィネンコは1993年当時のプーチンとロシアンマフィアのモギレヴィッチの間にあったつながりと良好なビジネス関係について語り始めた。

だが、これは余りに思慮に欠けた軽率な行為だった。すぐにリトヴィネンコはロシア政府のスパイに放射性物質ポロニウム210を盛られ毒殺された。

チェロ奏者 セルゲイ・ロルドゥーギン

プーチン大統領の2015年の年俸は770万ルーブル(13万7000ドル)だった。

だが、直接複数の企業とコネクションを持ち、20億ドル以上の投資をしていたことから考えると、この額はどうもおかしい。

そんな中、プーチンの親友でサンクトペテルブルク音楽院卒のチェロ奏者セルゲイ・ロルドゥーギンに1億ドルの資産があることが判明した。彼はプーチンの娘・マリアの名づけ親でもある人物。

ロルドゥーギンは、この件について弁明しなかった。彼はプーチンの隠し財産を守る秘密の倉庫番だと特定された。

新興財閥オリガルヒ

1987年、トランプがロシアの地に初めて降り立ったのはこの頃だ。

彼は費用を全額負担してもらってロシアに渡り、モスクワとレニングラードで新興財閥オリガルヒと大金が動く取引をおこなっていた。

これまで60人以上のロシア人がトランプタワーに巨額の投資をしている。トランプの取引がロシアでどれほど広がっているのかは知られていない。

2017年2月13日、記者会見でトランプはこう発言した。

「自分のために言わせてもらうが、私はロシアに何も所有していない。ロシアで借金もしていない。ロシアと取引もしていない」

これは厳密な意味では正しい発言だ。ここで個人を示す「私」という表現を使っていることに注目だ。

もし、トランプの会社がロシアで利益を得ているなら、記者会見の言葉に問題は無い。それはあくまでトランプ個人の利益ではなく、会社の利益だからだ。だが、今さらトランプの言葉を真に受ける人は少ないのではないだろうか。

初仕事はロシア制裁の解除

大統領に就任してトランプが着手したのはアメリカがロシアに課していた制裁を解除することだった。

ロシアから北朝鮮への武器販売、ウクライナやクリミアへの積極的な介入などに対する制裁は前大統領オバマの治世のものであり、トランプにはこれを容易に解除できる権限があった。

議会決議が必要なものは、そう簡単に解除できないが、もはや積極的に制裁を加える必要はないのだと認めさせる力を持っていた。

トランプとロシアのマフィア

トランプは30年以上にわたりロシアと良好な関係を築いていた。

その甲斐あってか、ロシア政府のハッカーがヒラリー・クリントンを狙って2016年の大統領選を裏で操作し、土壇場でトランプを勝利に導いた。

ロシアのマフィアは世界一結束力の強い大規模犯罪組織である。アメリカで発覚した、彼らの巨大マーケットやマネーロンダリングシステムは誰もが知るところだろう。

この組織がロシア政府とのつながりを利用してヒラリー排除に動き、ひとりの男をホワイトハウスに送ったとしても何ら不思議はない。マフィアはロシア政府の高官に縛り付けていた糸を操り、ホワイトハウスを遠隔操作した。

ウラジミール・プーチン

プーチンにとってみれば、アメリカ大統領を事あるごとに自由にコントロールできれば万々歳だ。

愛国心の強いロシアのハッカーたちはアメリカ民主党のサーバーやヒラリー・クリントンの個人的なサーバーから膨大な量のEメールやセンシティブなデータをハッキングして大量にリークし、大喜びしていた。

だが、いったいなぜ「愛国心の強いロシア人たち」はトランプのような人物をワシントンに送るよう尽力したのか。

ロシア政府のハッカーは西ヨーロッパにある多くの企業や商業施設のサイバー攻撃の裏にいるとされ、北朝鮮にいるプーチンの手先にも手ほどきしている。この手先はイギリス国民保険サービスの機能を混乱させたハッカーということが判明している。

2015年9月、FBIは民主党に対し、ロシアのハッカーが民主党のシステムを狙っており、すでに一部のサーバーに不正アクセスが行われていると警告していた。この警告は2016年のアメリカ大統領選挙中まで続いたが、どういうわけかトランプが当選するとそれはパタリと止まった。

ロシアマフィアのボス セミオン・モギレヴィッチ

1991年、ロシアマフィアのボス、セミオン・モギレヴィッチは当時シベリア刑務所にいた右腕のヴァチェスラーフ・イヴァニコーフのためにロシア政府から恩赦を買った。

イヴァニコフは釈放されると、ニューヨーク3番街にあるトランプ・プラザに訪れ、ロシア人の高級美術商フェリックス・コマロフと接触した。

イヴァニコフはのちにアメリカで「ロシア人のゴッドファーザー」となる。ロシアにいるモギレヴィッチの手足となってアメリカ社会で暗躍し、大規模な犯罪組織に発展させた。

FBIはイヴァニコフを追跡しても、お化けを追っているようなものだと語っている。彼はアトランティックシティにあるカジノ「トランプ・タージマハル」に大金を持ってよく訪れていた。

2015年、このカジノはマネーロンダリング規制を何年も故意に破っていた罪で1000万ドルの罰金を科せられ、2016年に経営難により閉鎖された。

トランプタワーにあったイヴァニコフの隠れ家

FBIは数年にわたってイヴァニコフを追跡し、ようやく隠れ家を見つけ出した。

組織犯罪課の責任者ジェームズ・ムーディは、のちにこう述べている。

「しらみつぶしに捜査をしても彼を見つけることは出来なかった。しかし、ニューヨークにあるトランプタワーの一室でついに見つけたんだ」

イヴァニコフはドナルド・トランプの隣人で、2人が頻繁に会っていることは言うまでもないが、トランプのビジネスやロシアを結ぶ新たな関係が発覚したことに多くの捜査員は驚いたという。

トランプが所有するような大規模な組織では、その規模ゆえに当然マネーロンダリング(資金洗浄)を惹きつける。コンビニで5000万ドルを誰にも気づかれずに洗浄する者などいない。

黒幕のシナリオ

ヒラリー排除の黒幕は実は内部にいたという説がある。確かに民主党自体を黒幕とすると奇妙に感じるかもしれない。

だが、民主党内部には2016年の大統領選候補者としてヒラリーを推すことに強く反対する一派もいたようだ。

反クリントン派の民主党員にとって裏工作が発覚した時の大スキャンダルを想像すれば、自分たちの手でヒラリーを陥れるのは余りに危険だった。

だが、もしロシア政府の誰かがヒラリーの出馬を断念させることが出来れば、民主党内の反クリントン派が利を得ることになる。

ロシア政府はアメリカ大統領選挙をいじくり回して大喜びし、民主党は「これは不正選挙だ!」と大騒ぎする。

そして、共和党のトランプを引きずり下ろし、彼らのお気に入りのジョー・バイデンを候補者にして再選挙を要請するという筋書きだったのかも知れない。

だが、なかなか筋書き通りに行かないのがリアルである。彼らとその背後にいる者たちは2020年まで待たねばならなかった。

アメリカの闇とビジネスマン

アメリカの対外純債務は「2,137兆9,298億円(令和4年末)」で世界一の借金大国だ。

ちなみに日本の対外純資産は「418兆6285億円(令和4年末)」で32年連続「世界最大の対外純資産国」を維持している。日本の資産とアメリカの債務。超赤字国のアメリカと超黒字国の日本。

少ない付加価値しか提供できなければ、消費(輸入)が生産(輸出)を上回り、足りない分を世界中から借りざるを得ない。その結果が、もはやまともに返済することが不可能な2137兆円もの対外純債務だ。

普通の国であればとっくに破綻してIMFの管理下に置かれているだろう。アメリカだけがそうならないのは世界の政治経済が歪められているから。

  • ドルは国際取引の決済通貨
  • ドルは原油取引の決済通貨であり続けた
  • アメリカは国際決済通貨のドルを世界で唯一勝手に発行できる
  • その大問題を覆い隠す外交力
  • 日本のような従属的な国との関係
  • 為替レートの恣意的な操作

世界中がアメリカに2137兆円も貸している現状。世界中がドルに投資、つまり約21兆ドルも保有しているということであり、その債権を誰かが売ろうとしても、もはや買い手など存在しないレベル。

世界的なドル離れを防ぐために金利を上げるしかないが、ドルが紙くずに近いと知って、世界はすでにドル離れを始めている。

世界一の対外純資産を持ちながら、どこまでも盲目的にアメリカの後をついていこうとするのは恐らく日本だけ。このまま行けば、紙くずになったドルを最後まで持たされ生贄になることは避けられない。

トランプは当然この大きな問題を把握している。だからディール外交を進めていた。「アメリカファースト」を声高に叫び、アメリカを最優先する外交姿勢は就任前から一貫していた。

彼はビジネスマンで、お金を取り戻すことしかおそらく頭にない。「アメリカ製品を買え」、「アメリカの雇用を守れ」。単にどうにもならなくなった世界一の借金を減らそうとしているだけ。

だから売れるものなら何でも売ろうとする。武器や詐欺的金融商品、法外な医薬品、遺伝子組み換え食品など。

抱えた借金はもはや返済不可能なほど膨らんで、残された道は従属国から奪うことだけだ。

Qアノンとディープステイト

2017年から2021年までのトランプ政権下、インターネットの匿名掲示板「4chan」に「Q」と名乗る自称軍関係の高官を名乗る人物が「ほのめかし」や「予言」めいた書き込みをはじめた。

これを機に光と闇の世界最終戦争のような妄言が一部の市民の間に広まった。アノンはアノニマス、「匿名」を意味する。

このストーリーによれば民主党議員やグローバルエリートたちは小児性愛者であり、人身売買組織から手に入れた子どもたちを性的に虐待するだけでなく、血を吸ったり、人肉を食したりするという。

このような悪魔崇拝的な秘密結社がディープステイト、通称DSという闇の政府であり、この集団がアメリカ政府を陰で操っているとされる。

トランプとQ 光と闇

「Q」はインターネットを通じて、これらに関する数々のヒントを支持者に送る。それは、どこか暗号めいたパズルを解くような感覚でいかにも現代的である。

トランプはリベラル(自由主義者)の間では虚言癖のツイートをすることで有名だ。だが、Qアノン支持者の世界観では、正義が遂行される神の国アメリカの復活はトランプにかかっているとされる。

光と闇の世界の戦いといった図式の陰謀論は「絶対神・全能者」という独裁者が「陰ですべてを操っている」という世界観をもつ一神教とも親和性が高かったという見方もできる。

憎悪の対象は同性愛から小児性愛へ

やたらと小児性愛を強調するのは、昨今の「LGBT問題」を見てもわかる通り、これまで聖書の伝統が弾圧してきた「同性愛」が人間の当然の権利として市民権を得てしまったからだ。

そこで次なる憎悪の対象として「小児性愛」が浮上してきたという見方もあるようだ。

さらに、Qアノン的な正義と悪の戦いの構図は黙示録的であるとか、救世主による世界の変革は福音的であるとか、いずれにせよ聖書の神話的伝統がその背景にあるのは間違いない。

「左vs右」ではなく「上vs下」

実際の対立は左派リベラル(民主党)と右派保守(共和党)の間で起きているのではない。これまで新自由主義やグローバル化は民主党と共和党の違いに関係なく推進されてきた。

この闘争は勝ち組エリートである上級国民と労働者である下級国民との間で勃発しているのだ。これと同じことがヨーロッパでも進行中であり、日本でもようやく認識されつつある。

つまりは「左vs右」ではなく「上vs下」の争いなのだ。刃を向けられることを恐れる支配層はそれに気づかせないようにするため工作員を使い巧みに左派と右派の対立を煽りつづける。

外国勢力や売国企業が日本列島から搾取する物が無くなるまで、この馬鹿馬鹿しい不毛な争いが繰り返されるのだ。

あとがき

光だの闇だの戦士だの。どっちが正義でどっちが悪だのと議論は尽きない。

だが、そんなものはどっちもどっちだ気持ち悪い。正義のフリをした闇とただの闇が争っているだけだ。

救世主を熱望し、救世主にすがってはならない。我々一人一人が主役なのだから。

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