インターネット通販大手アマゾンが日本国内の収益を日本法人のアマゾンジャパンの売上高に計上する方針に転換するとの発表が2019年12月22日にあった。
また、アマゾンは2017年、2018年の2年間で計300億円弱の法人税を日本で納付していたことも明らかになっている。
これまで、日本法人の「アマゾン・ジャパン」はアメリカのアマゾン本社から業務委託報酬を受ける形で販売事業を展開していて、日本国内の取引先との契約もアメリカのアマゾン本社が結んでおり、売上高もアメリカに計上し日本での税負担を軽減しているとの批判があった。
しかし、外国企業が主体の会社では日本での事業展開上の制約も多く、更なる発展の足かせにもなっているとの意見もある。
また、「税逃れ」に対する各国の制裁や経済協力開発機構(OECD)、G20(主要国首脳会議)でも問題になっている多国籍企業の課税強化に対する取り組みも影響しているのだろう。
この記事では、日本で税金を払うようになったアマゾンとこれまでの経緯について簡単に解説する。
アマゾンの税金(法人税)の支払いはゼロだった
2009年に東京国税局がアマゾンに対して140億円の追徴課税をおこなったのがきっかけで、アマゾンが日本で法人税を払っていない事が話題になった。
国税局は、日本国内の売上に関しては日本の法人税を払うべきであると指摘したのだ。
この報道により「アマゾンは日本で税金を払っていない」という事が世間で騒がれるようになった。
アマゾン日本法人の営業形態は業務委託
- アマゾン・ジャパン
- アマゾン・ロジスティクス・・・配送センター(倉庫)
日本国内でのアマゾンの販売業務は上記の子会社がおこなっていて、アメリカのアマゾン本社から販売業務を委託されているという営業形態をとっている。いわゆる、業務委託というやつだ。
この業務委託のシステムは、利益のほとんどをアメリカのアマゾンに吸い上げられる仕組みになっているため、日本での利益が残らないようになっている。だから、これまでアマゾンは日本で法人税を払っていなかった。
しかし、外国の企業であっても日本で商売をして日本で収益を上げている以上、原則的に日本で法人税を納税すべきと日本の国税局は課税に踏み切った。
アマゾンは国税局に反論し、日米二国間協議に発展
東京国税局による法人税の課税にアマゾンは反論し、日本とアメリカの2国間協議に発展する。
アメリカのアマゾン本社はアメリカで納税していて、日本でさらに納税すれば「2重課税」になってしまうからだ。
なので、アマゾンは日米の2国間協議を申請した。
日米租税条約は国同士の力関係に左右される不平等条約
この法人税をめぐる日本とアメリカの2国間協議は、日本が全面的に譲歩するという結果に終わった。
アマゾン側の言い分としては、「アメリカの税制に従って自分たちは納税している、文句があるならアメリカ政府に言ってくれ」ということだ。
ここまでくると、「国 対 一企業」というよりも、「国 対 国」の問題になってくる。そして、この租税条約は国同士の力関係に影響されるので、不平等条約とも言えるのだ。
残念だが、アメリカに逆らえない日本は泣き寝入りするしかないということになる。本来は日本で稼いだお金は日本で納税するのが当たり前なのだが、これもアマゾン流の節税対策なのだろうか。
ちなみに、日本企業がアメリカ国内で収益を上げた場合は、しっかりアメリカで納税している。
アマゾンの税金対策(節税)はタックスヘイブン
世界各国で収益を上げているアマゾンだが、稼いだ国で法人税を払わないようにするため、「タックスヘイブン」という税金対策(節税)を利用している。
タックスヘイブンとは
タックス・ヘイヴン(英語:tax haven)とは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことであり、租税回避地(そぜいかいひち)とも、低課税地域(ていかぜいちいき)、とも呼ばれる。
フランス語では「税の楽園」「税の天国」を意味するパラディ・フィスカル(フランス語:paradis fiscal)と言い、ドイツ語などでも同様の言い方をする。しかし、英語のタックス・ヘイヴンのhavenの日本語での意味は「避難所」であって、「楽園」、「天国」を意味するheavenではないことに留意されたい。
(出典:wikipedia)
ウィキペディアによるとタックスヘイブンとは、「税金を払わなくてもいい地域や税負担の安い場所」を指す。
筆者は今までタックスヘイブンを「税の天国」という意味での「ヘブン(天国)」と勘違いしていいたが、ヘイブンは「避難所」という意味なのだ。
アマゾンは子会社を税金の安いタックスヘイブンに置いて、アマゾングループ全体の利益を集中させることで節税している。
アマゾンのおもなタックスヘイブン(租税回避地)
- アイルランドのダブリン・・・クレジットカード決済センター
- ルクセンブルク・・・ヨーロッパでの利益
アマゾンのおもなタックスヘイブン(租税回避地)は上記のようになっている。
アイルランドもルクセンブルクも世界的なタックスヘイブンで、特にルクセンブルクはアマゾンに税の優遇措置を実施していて世界中からバッシングを受けていた。
アマゾンはアイルランドにクレジットカードの決済センターを置いているため、日本でクレジットカードを使ってショッピングをしても海外での購入という扱いになってしまう。
また、日本で販売サービスを運営しているアマゾン・ジャパンは、補助業務をおこなっているだけの存在として、日本で納税する義務はないという主張だった。
アマゾンの後ろ盾はアメリカ政府
世界中からバッシングを受けているにもかかわらず、このアマゾンのズルい税金対策(節税)がまかり通っているのは、アメリカ政府の後ろ盾があるおかげだ。
アマゾンはアマゾングループ全体の納税額の半分をアメリカに納めている。また、アメリカの税務当局もアマゾンが他国ではなくアメリカに優先的に納税してくれれば、ありがたいのだ。
なので、自国アメリカにより多くの税金を納めることで、アマゾンが他国と税金問題で揉めた時にはアメリカ政府が出てきて話をするということになる。
裏社会的にいえば、アマゾンはアメリカ政府という強力な「用心棒」を発動できるということだ。
アマゾンに対する世界各国の対応
アマゾンの行き過ぎた節税対策の乱用に、各国もだまってない。
G20(主要国首脳会議)やOECD(経済協力開発機構)においては、税逃れをする多国籍企業に対する対応策も話し合われている。
- EU(欧州連合)・・・ルクセンブルグ政府に追徴課税をするように指示
- イギリス・・・アマゾン、グーグルといったアメリカの巨大企業の税逃れを防ぐ法案を作成
EU(欧州連合)やイギリスともなればアメリカに対等にモノが言えるので、アマゾンが用心棒の存在をチラつかせたとしても簡単には引くことはない。
アマゾンにはアメリカ国内からも批判の声が
アマゾンに対する批判の声は世界各国だけではなく、自国アメリカからも出ている。アマゾンは莫大な収益に見合った税金を納めていないからだ。
アマゾングループの2018年の総売上
アマゾンの2018年の総売上と利益
- 総売上・・・2328億8700万ドル(25兆6175億円)
- 純利益・・・100億7300万ドル(1兆1080億円)
アマゾンの2018年の総売上は、2328億8700万ドルで純利益は100億7300万ドル。
1ドルを110円で換算した場合、上記の総売上が25兆6175億円で純利益は約1兆1080億円となる。
アマゾンの2018年の日本国内の利益
アマゾンの2018年の日本での売上は、1兆5350億円。さすがアマゾン売上だけでも、とてつもない破壊力だ。
フランスはデジタル課税でGAFAを狙い撃ち
フランスは、2019年7月に大手IT企業を対象とする「デジタル課税」を導入決定し、この税制は10月からスタートしている。
フランス国内のデジタルサービス収入に3%課税
このデジタル課税は、GAFA税とも呼ばれており、フランスでの売上高2,500万ユーロ以上、もしくは世界での売上高が7億5000万ユーロ(8億3800万ドル)以上の売上がある企業に対して、フランスでのデジタルサービス収入に3%の課税をするものだ。
GAFAとは
GAFA(ガーファ)とは、アメリカの巨大IT企業であるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社の頭文字をとった総称である。
この大手4社は世界中で莫大な利益を上げているのに法人税の負担が少ないため、たびたび批判されている。
課税対象はGAFAだけではない
このデジタル税は、アメリカ大手4社のGAFAを狙い撃ちするために作られたようにも思えるが、対象企業は30社と言われている。アメリカの企業のほか、中国、ドイツ、スペイン、イギリスの企業も含まれる。
あとがき
ネットショッピングといえば、やっぱりアマゾンと楽天。
でも、日本に法人税を払わないアマゾンで買っても、日本のお金がどんどん海外に吸い上げられてしまうので、アマゾンで買うのを辞めるという意見もネット上で見られた。
日本だけでなく世界的にも格差社会が広がり、富や権力の一極集中や上級市民が優遇されたりすることに庶民の怒りの矛先が向かいやすい世の中になってきている。
アマゾンが日本で法人税をしっかり払うとなれば、心おきなくアマゾンでもショッピングできるのだが。