2020年5月22日、「スーパーシティ法案」が衆議院で可決された。
状況的には検察庁法改正案、および黒川検事長の麻雀賭博スキャンダルで国民が面食らっている間に衆議院をスピーディーに通過されてしまったのだ。
スーパーシティ法案が可決されるまでの経緯
スーパーシティ法案は今季の国会の束ね法案の中でも「種苗法改正案」と並ぶ隠れ本命とも言うべき法案である。
国民の関心が他に向いている隙こそ、スピード可決するチャンスだった。
スーパーシティ法案は国民の関心が芸能ニュースに向いている隙に衆議院を通過
2020年4月12日に芸能人の石田純一が新型コロナウイルスに感染したとの話題でショックを受けた方もいたのではないだろうか。
我々の関心がこの芸能人コロナ感染のニュースに集中していたあの日「スーパーシティ法案」は衆議院本会議を通過してしまったのだ。
この審議もたった5時間のスピード採決だった。
この火事場泥棒ともいえるショックドクトリンについての記事こちら
スーパーシティ法案とはそもそもどこから出てきたのか?
もともと、スーパーシティ法案は2018年に提出されてから、3回に渡り審議入りすらされず、取り下げられていた「いわくつきの法案」だった。
特定機密保護法の裏で国家戦略特区法案が通過
2013年12月、国家による言論弾圧の恐れがあるとして、反対の声が強かった「特定秘密保護法」という法案があった。
あの時、メディアが特定秘密保護法の話題で一色になったその隙に通過したのが「国家戦略特区法案」だった。
スーパーシティ法案は国家戦略特区法のアップデート版である
「国家戦略特区法」は、日本を世界一ビジネスがしやすい国にするためのものだ。
国内の特定地域内の規制を自由にして特定の企業や外資系企業が参入しやすくする別名「TPP準備法」とも言われていた。
そして、「スーパーシティ法案」はこの「国家戦略特区法」に様々な要素を追加したアップデート版なのだ。
ことの発端は2018年片山さつき大臣と竹中平蔵氏が率いる有識者懇談会での提案
2018年、片山さつき地方創世大臣と竹中平蔵座長が率いる7人の有識者懇談会で「スーパーシティ法案」が提案された。
座長の竹中平蔵氏によると以下の3つで構成するミニ独立政府を作るというものだ。
- 国
- 自治体
- 企業
ここでは、すべての規制の権限を「ミニ独立政府」が決める。
しかし、インフラは国民の税金を使って国が作るという、まさに企業にとってはウハウハで得しかない「未来型デジタル管理都市」なわけである。
海外のスーパーシティの導入例
中国の杭州市の導入例
海外での導入例は「中国の杭州市」。
ここでは、国とアジアのアマゾンと言われる大企業「アリババ」の共同開発したAI(人工知能)による交通管理システム導入したおかげで交通渋滞はほぼ無くなり、車の流れが15%も速くなったという。
片山さつき大臣は2019年1月に中国を視察し、8月30日に中国政府との間でスーパーシティ構想にかんして日本と中国が協力的に情報を共有していくという覚書を交わしている。
スーパーシティ法案は法律に縛られず企業が好き勝手できる法案
スーパーシティ法案が通れば、企業は法律や規制に縛られずに新しいビジネスにも挑戦できる。
スーパーシティ法案のキモであるミニ独立政府とは
ろくでもない竹中氏が提案するミニ独立政府の下では、いろんな事がスムーズに進みまくるのだ。
- ドローンによる配達
- 自動運転車両の導入
といったビジネス計画が出てきた場合には、
- 実施企業
- 首長
- 関係者
といった上記の三者で計画を立て、総理大臣が許可を出して終了。
住民の安全を守るための法律「道路運送法」の許可がなくても計画の実行が可能になる。
この特定地域内で企業が新しいビジネスをする時にスーパーシティ法案が通っていれば、法律に縛られずに早急にビジネスを始めることができるというグローバル企業に捧げられた生贄、いや忖度法案といえる。
地域住民の同意も思うがまま
いくら企業さま忖度法案と言えども、そこは無人ではなく住民がいるわけで。
まさか、住民をないがしろにしないだろうな。
我々、住民の反対意見や同意などはどうなるのか。
住民を無視して勝手に日本にカジノとか作ったりしないよね?
ビジネスエリアで4種類の区域会議が作られる
住民の同意を取り付けるには、ビジネスをする地域で以下の4種類のメンバーで構成される「区域会議」というものを作る。
- 国家戦略特区担当大臣
- 自治体の首長
- 事業を実行する企業
- その他のビジネス関係者
この4者間で地域住民の同意をどのようにして得るのかを自由に決められるというものだ。
例えば、役所に設置されている掲示板にビジネス計画書の貼紙をして、一定期間の間で反対意見が出なければ住民の同意を得たとして半ば強引に計画を進めるということも出来てしまうのだ。
こういうやり方されると、気づかない。
役所に行ってもイベントの告知情報とかも見たり見なかったり。
そもそも、一般人はそんなにしょっちゅう役所に行かんだろという。
スーパーシティ構想と地域住民のプライバシー問題
スーパーシティ構想の問題は「住民の同意」だけでなくプライバシーにも影響を及ぼす。
グーグル系列会社がトロントの未来都市計画から撤退
2017年、アルファベット社(グーグルの親会社)の傘下の「Sidewalk Labs」は、カナダ・トロントで5千万ドルの巨額を投じて進めてきた「未来都市計画」から撤退することを決定した。
この計画は未来的なコンセプトが注目されていたが、住民たちから収集したデータの扱いなどが議論を呼んでいた。
都市のすべてをグーグルのセンサーで監視管理
- ヒト
- モノ
- カネ
という3大要素のすべての動きをグーグルのセンサーで監視管理するというデジタル都市計画だった。
具体的には、街中に「監視カメラ」と「各種センサー」を設置して以下のように様々なデータを取る。
- 車の流れ具合
- 大気汚染
- 街の騒音
- 住民の移動データ
- 買物履歴
- 通院履歴
- 光熱費
- 家庭から出るコミの量
その後、取得したさまざまなデーターをグーグルが管理するという、プライバシーもへったくれもないシロモノだった。
しかし、今月の始めに住民の反対の声が大きくなり、グーグルは撤退を余儀なくされたのだ。
グーグル系列会社の撤退理由は住民への情報開示
スーパーシティ構想反対派の声とは、「スーパーシティ構想は住民のプライバシーを侵害する」というもの。
スーパーシティ構想がカナダでストップされた背景にはリベラルな国民性が原因ではという意見もある。
しかし、ストップがかかった最大の理由は、住民に対して構想に関する詳しい情報が開示されたためである。
これは当然の事で、個人情報のすべてが抜かれるような場所に住むというのは恐怖しかない。
スーパーシティ構想に欠かせないマイナンバーとキャッシュレスと5G
スーパーシティ構想に欠かせないものと言えば、「マイナンバー」と「キャッシュレス」である。
与党議員の中から10万円の給付金の申請に「マイナンバーを義務化すべきだ」という声が出てきたのは決して偶然ではない。
今後、将来的にベーシックインカムといった国から生活費が支給される制度が始まった時には、マイナンバーカードの所持が支給条件にされる可能性があるのだ。
- 運送の利便性の強化
- キャッシュレスで現金不要
- 行政手続きは全て電子化され時間短縮
- 個人情報の企業への提供により医療や在宅サービスがスムーズに
- 子供たちは世界最先端のオンライン教育が受けられる
- 区域内のインフラ(電気・水道・ガス・通信)は企業により最適に管理される
このようにいろいろと駄々洩れで最高に便利な未来都市が実現するのだ。
素晴らしい完全なる監視管理社会の誕生である。
スーパーシティ構想と5G
ミニ独立政府がデジタルで私たちの情報を管理するという「スーパーシティ構想」に欠かせないものの1つに「5G」がある。
次世代通信の規格「5G」の背景には、日米FTAとセットで通った日米デジタル貿易条約との深い関係がある。
日本は2019年9月25日、日米貿易協定(FTA)と同時に日米デジタル貿易条約に署名しました。
安全性が不安視されている5Gについての記事はこちらです
あとがき
国民にとってこんなに素晴らしい構想なのに、なぜ法案が決まろうとしている時に国民のほとんどがスーパーシティについて何も知らされていないのか?
今国会で種苗法改正と並ぶ、本命である「スーパーシティ法案」。
国会の「束ね法案」は巧みに国民の目をあざむくため、何本もの矢で構成されていて姑息で悪質なのだ。
国民がコロナで弱っている隙に資本家優遇の政策を通そうと躍起になっているように思えるのである。
今までは、目立たずコソコソとやられていた事が、平成から「令和」に変わった瞬間から目に見えてあからさまに姿があらわになりだした。