不思議な話

【米国のバブル経済】ゴールドマン・サックスの華麗な錬金術

1920年代、米国経済は黄金時代に突入した。ニューヨーク株式市場(ウォール街)は大盛り上がりを見せ、そしてバブル経済が発生する。

ことの始まりはフロリダの不動産ブーム。「土地の頭金は10%だけで良い」という謳い文句により投機が本格化していった。

1924年から1925年にはわずか数週間で購入した土地の値段が倍になり、「借金してでも土地を買え!」という状況になった。

このバブルがニューヨークのウォール街に飛び火していく中、金融企業のゴールドマン・サックスは、あこぎな錬金術で肥え太ってゆく。

この記事でお伝えすること
  • 米国のバブルとゴールドマン・サックスの錬金術について

ゴールドマン・サックスと米国バブル

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ゴールドマン・サックスをはじめとする金融機関は「ユニット型投資信託」という商品を販売した。これは、てこの原理(レバレッジ)を利用するもので、理論的にはいくらでも儲けることができるというものだった。

1921年、米国の金融会社ユナイテッド・ファウンダーズは最初にユニット型投資信託の販売を始めるが、すぐに失敗した。結局、この会社は友人から500ドルを融資してもらうことで倒産を免れたという。

その後、投資資金を得るために証券を売出し、最終的に資産は500ドルから10億ドルになったと経済学者のガルブレイスは書いている。

「その後、この会社は金を借り、他の証券へ投資するための資金に充てるために証券を売り出した。こうして保有するに至った証券の額は、やがては約10億ドルに達した。500ドルという当初の投資額から始めて、10億ドルの価値のある資産を持つに至ったのであって、これは『てこ』の作用としては史上空前のものであったと言ってよい」

『バブルの物語』/ジョン・K・ガルブレイス

ゴールドマン・サックスの錬金術

person holding wand on top of bowl

この不可思議な動きの背後にはゴールドマン・サックスが存在する。ガルブレイスは、『てこの原理』を使った錬金術について、ゴールドマン・サックスの名を交えて次のように言及する。

「ゴールドマン・サックス・トレーディング会社は、ゴールドマン・サックスによって1928年に設立され、その唯一の目的は普通株の所有および投機であった。この会社の株が最初に公開されたとき、その金額は一億ドルであって、とりたてて大きな金額と言えるほどではなかった。この収入は他の証券の購入にあてられた」

「次の年の夏、トレーディング会社はシェナンドア会社というものを設立し、その株式及び優先株を公開したが、普通株の保有による会社の究極的な支配権はトレーディング会社が持ち続けるようにしておいた。シェナンドアの目的もまた、普通株を購入・保有することだった。それが保有する株に価値が高まると、その利益が帰属するのは普通株主・・・特にトレーディングを含む・・・であって、固定配当を受ける優先株主ではなかった」

『バブルの物語』/ジョン・K・ガルブレイス

ここで「ゴールドマン・サックス」「ゴールドマン・サックス・トレーディング会社」を設立した。その後、ゴールドマン・サックス・トレーディング会社は、さらにその下に「シェナンドア会社」を設立した。

そして、シェナンドア会社は「ブルーリッジ」を設立し、その儲けは全部親会社であるゴールドマン・サックス・トレーディング会社に吸収されることになっていた。

「シェナンドアは、同じ手順を踏んで、ブルー・リッジという会社を設立した。ブルー・リッジの普通株の価値が高まると、『てこ』の働きとして、その利益はシェナンドアの普通株主に帰属した。このように価値が増大すると、めぐりめぐってトレーディング会社の保有資産の価値がいっそう大幅に増加することになったわけである」

『バブルの物語』/ジョン・K・ガルブレイス

てこの原理とネズミ講

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ゴールドマン・サックス(親会社) → ゴールドマン・サックス・トレーディング(子会社) → シェナンドア(孫会社) → ブルー・リッジ(ひ孫会社)

この構造の正体は「ネズミ講」である。「上」が「下」を作って搾取する。「下」はさらに「その下」を作って搾取する。この構造はカネが回らなくなると全てが崩壊する。

1930年代、この華麗な錬金術ショーに巻き込まれた個人投資家さんたちを待っていたのは、株価が「222.5ドル→1.75ドル」に下落する、投資したカネが「200分の1」に減少するという悲劇だった。

最初から破綻することが分かっている片道切符の旅。ゴールドマン・サックスは確信犯としてこれを実行した。

「ここで一つ見落とされていたのは、こうしたプロセスが逆の方向に働くとすればどうなるか、ということだった。この場合には、固定利率で支払わねばならぬ債務があるのに、会社が保有する株の市場価値も、その株から上がる収益も、減少するわけである。この減少は確実に起こった。ゴールドマン・サックス・トレーディング会社の株は104ドルで発行され、その数ヶ月後には222.5ドルまで上がったのであるが、1932年の晩春には1・75ドルとなってしまった」

『バブルの物語』/ジョン・K・ガルブレイス

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