1980年代のレーガン政権時、米国政府が武器密売に関わっていた「イラン・コントラ」事件があった。
1980から1988年までのあいだ、中東ではイラン・イラク戦争が勃発していた。この時、米国はイラク側につき、イランを敵視していた。だが同時にイランに武器の密売もおこなっていた。
挙句の果に、米国はイランから支払われた武器の代金をニカラグアの反共ゲリラ「コントラ」の援助に流用していたという無茶苦茶な話である。
石油取引と武器取引の両建て戦略
イラン・イラク戦争の時代にCIAに所属していた中東問題の専門家スティーブン・ペレティエ氏は著書で米国のアフガニスタン戦争とイラク戦争に関して次のように述べている。
「アメリカが何を体現しているかは明白だ。アメリカにとって重要なのは何か?答えはもちろんビジネスだ。アメリカは1にも2にもビジネスの国である。ここで論じている問題に即していえば、石油へのアクセスを確保しつつ武器取引を進めることだった」
スティーブン・ペレティエ著/『陰謀国家アメリカの石油戦争』
米国は石油取引と兵器取引を同時進行させた。イラクを支援しながらイランに武器を売っていたように、時代が変わってもその基本戦略は変わらない。イラン・コントラ事件は米国の武器密売の決定的証拠である。
「この事件での武器密売は中東から南アメリカまで世界中に及び、ブルネイ国王まで引き入れようとしたほどだ。なぜこのようなことが行われたのか。
本書の見るところでは、レーガンがイラン・コントラ事件に関与したのはイデオロギー上の理由からではない。少なくとも(レーガン派が宣伝したような)第一の理由ではなかった。構造的にそうせざるを得なかったのだ。レーガン政権下で行われた途方もない軍拡は、表向きは悪の帝国に勝利するという理由がつけられているが、じつは軍産複合体の救済策だった。製造された武器は売却を待っている。儲かればなおよい」スティーブン・ペレティエ著/『陰謀国家アメリカの石油戦争』
利益追求のためのイデオロギー
ここで重要なのは「軍産複合体」の利益であり、イデオロギー(政治的思想)は世界を欺くための口実にすぎないということ。
中国や北朝鮮を問題にするときも同じだ。「中国と北朝鮮は共産主義国家なので信用できない」ということになっている。
だが、その暗部に隠れているのは軍産複合体の利益である。彼らは何が何でも武器を売りたい。利益を最大化するために戦争したいのだ。