私たちはリーマンショックに目を奪われて、その前年に起きたサブプライム問題の存在を見過ごしてしまいがちだ。
だが2000年代における米国経済の破壊のベースにはサブプライム・バブルにあった。
サブプライム問題とリーマンショックが続けて発生したのは、グローバリストにとって予想外の問題が発生したからだ。
住宅バブルの発生
21世紀に入ると、米国の不動産市場では住宅価格が過熱した。米国の人口の大半は欧州からの移民で、彼らの最大の目標は大きな家に住むことだった。だが、1990年代から住宅は「投資の対象」となっていった。
結果、1997年から2006年までの10年間で住宅価格は2倍になり、住宅バブルが発生した。当時の論調は「今こそ住宅を買って、不動産でひと財産築こう」というものであり、この情勢をマスコミが煽った。
そして、当時の米国政府も「マイノリティ(社会的少数者)にも住宅を持たせる」という新政策を掲げ、このバブルを後押しした。このような動きの中で住宅バブルは、現代のアメリカンドリームとなった。
ローンシステムと住宅投資
当時、米国の住宅市場には「ホームエクイティローン」というものが存在した。これはローンを組んで家を買えば、今度はその家を担保に入れることで、さらに高額なローンが組めるというシステムだ。
つまり所有している住宅の市場価格が高ければ高いほど、顧客は次の住宅に投資できる。このローンさえあれば米国では何軒でも住宅を購入できた。さらに、そのローンで自動車や贅沢品を購入することもできるのだ。
この夢のような政策が立案された当時、米国はブッシュ大統領と米国中央銀行FRBのグリーンスパン議長の時代であった。
サブプライム・ローンの目的
2000年代の米国では住宅金融専門会社が続々と設立された。彼らは「これまでローンを組んだことがない人たち」、いわゆるサブプライム層(社会的信用の低い低所得者層)を対象にサービスを始めた。
米国ではクレジットが生活の基盤となっていく。だが信用の低い低賃金労働者や移民は、これまでローンを組めなかった。そこに住宅バブルの到来である。住宅金融会社は堰を切ったように金を貸しはじめた。
だが、サブプライム層のクレジット情報(信用情報)には問題があった。彼らは「職業が安定せず賃貸に住み、住所を点々とする人々」とランク付けされている。不景気になれば真っ先に解雇されてしまう人々なのだ。
低所得者層を食い潰すため
ローンを組んだことがないサブプライム層は審査が甘くなる。そのため金融機関で拒否されることがなかった。この状況は「多くの国民に住宅を提供する」という目標を掲げていた米国政府にとって好都合だったのだ。
「サブプライム層」とは「市場経済のメカニズムがよくわかっていない人たち」のことだ。その彼らに「高利で金を貸す」ということは「貸した金が返ってこないこと」を意味する。
ではなぜ、金融会社は彼らに融資したのか。その理由は金が返ってこなくても、代わりに担保の住宅が取れるからだ。要するにサブプライムローンは低所得者層を食い潰すことが目的だった。
サブプライム・ローンとバブル崩壊
2006年6月、米国中央銀行FRBが政策金利を上げると、それに合わせて住宅ローンの価格も上がった。そして、2006年12月、住宅の価格高騰がピークを迎え、下降をはじめる。
そのため住宅を買おうとする人も減少していった。彼らはこのメカニズムを繰り返してきた。FRBが金利を上げた結果、2007年には住宅バブルの崩壊が始まった。
多くの国民が価格上昇を前提に住宅を買っていたため、価格が下がるとホームエクイティローンが機能しなくなった。つまり住宅の購入資金だけでなく、自動車や贅沢品などを買った分がそのまま借金となって残るのだ。
サブプライム・ローンの特徴
サブプライム・ローンの特徴は、最初は金利が低いが数年後には爆発的に高くなるということだ。これにより多くの米国民が住宅ローンを返済することができなくなった。これは「ペイメントショック」と呼ばれている。
そして世界中の金融機関は困惑することになる。サブプライム層のローンを組んだ住宅金融専門会社が、ローンの債権を投資銀行や連邦住宅抵当公社に売却していたのだ。そこには証券化という手法が存在した。
彼らは証券化という手法を使って、住宅ローンの返済金や分配金を求める権利(請求権)をもとにした金融商品を作り、世界中の金融機関に売って資金を集めていたのである。
あとがき
バブル崩壊の影響は下から上へと波及していく。まず低所得者層からの返済がストップし、多くの住宅金融専門会社が倒産する。
世界の金融機関には貸したお金が返ってこない。途中で資金が止まった金融機関は倒産する。金融機関は手持ち資金を少しでも多く蓄えようとして、新規の貸し出しを控える。
これにより他の企業も次々と倒産していった。FRBとはグローバリストの所有物である。