モッキンバード作戦とは、一般大衆をテレビなどのメディアを使っておこなわれて来たCIA(米国中央情報局)の洗脳プログラムである。
1950年代初頭の冷戦時、当時のCIA長官だったアレン・ダレスはマスメディアをコントロールして、戦争や特定の政治的思想を世に広めるために利用した。
CIAの洗脳プログラムといえば、MKウルトラ計画が有名だが、この記事ではモッキンバード作戦についてお伝えする。
モッキンバードとは
この作戦名にもなっているモッキンバード(Northern Mockingbird)とは、南北アメリカ大陸に生息するスズメ科の鳥のことである。
日本では、「マネシツグミ」という名で知られている。
この鳥は、以下のような生物や楽器、機械の音などの鳴き真似が得意なことから「ものまね鳥」とも呼ばれている。
- 別の鳥
- 犬
- ピアノの音
- 車のクラクション
この作戦名は、CIAの思いどおりの世論をつくりだすために、彼らの望む思想をモノマネするかのように発信してくれるメディア広報を作ろうとした目的から、この鳥の名前をとり「モッキンバード作戦」と名付けられた。
モッキンバード作戦
モッキンバード作戦とはCIAがメディアを使ってプロパガンダをおこなった大衆を洗脳する手法の一つ。
この作戦にはCIA上層部の3名が関わっていた。
- アレン・ダレスCIA長官
- フランク・ウィズナー特殊工作本部長
- コード・メイヤー(CIAのエージェントでワシントンポスト紙編集長ベンジャミン・ブラッドリーとは親戚)
ウィズナーは、大手メディアのオーナー、ジャーナリストたちをこの計画に引き入れた。
CIAの協力者たち
アメリカで有名な事件「ウォーターゲート事件」をスッパ抜いたことで知られるジャーナリストのカール・バーンスタインによれば、1952年以降400人を超えるジャーナリストがCIAの手先となって働いていたという。
CIAに協力したとされる者の中には、以下の者たちが含まれていた。
- ワシントン・ポスト
- ウィリアム・ペイリー(CBS創業者)
- ヘンリー・ルース(タイム誌・ライフ誌の発行人)
- アーサー・ザルツバーガー(ニューヨークタイムズ紙の発行人)
CIAは、このような繋がりのあるメディアやジャーナリストを通じて、海外情勢や各国首脳に関する情報を意図的にリークした。
その手法は、小さな新聞社に情報を流しメディアを通じて徐々に話題を広げていくというものだ。
メディアへの介入
wジャーナリストのティム・ワイナーによるとCIAのダレス長官は電話一本でメディアのニュースに口を挟むことができたという。
気に入らない記者を担当から外させたり、タイム誌やニューズウィーク誌の海外支局にCIAの仕事を協力させたりした。
- 1953年のイランのクーデター
- 1954年のグアテマラのクーデター
の計画はともにCIAが企てたものであると後に暴露された。
しかし、その時、内情を知っていたジャーナリストたちはそれを記事にすることはなかった。
それは、アメリカの愛国の為であり、国民の義務だと信じるものもいた。
それは、結局歪んだ愛だったかも知れない。
メディアは好きな音楽が掛かる巨大なジュークボックス
海外工作本部長のウィズナーは、「メディアはCIAの好きな音楽だけを奏でる巨大なジュークボックスだ」と称した。
この言葉からも政府や国家組織がメディアを私物化している様子が見て取れるだろう。
モッキンバードは今もなお「口真似」を続ける
1975年、モッキンバード計画の存在は上院のチャーチ委員会の調査報告で明るみになり、そのときCIA長官だったパパブッシュは金銭を伴うメディアとの協力関係は解消すると表明した。
しかし、CIAとメディアの繋がりなくなったとは言えない。
むしろ、その結びつきはより強固になったのではないか。
2003年のイラク戦争では、アメリカ政府がイラクが大量破壊兵器を保有しているというフェイクニュースを流し、侵略戦争に突入した。
また、2020年のアメリカ大統領選挙では再選を狙うトランプ氏をアメリカのほとんどのメディアが、あたかも一方向だけに向けられた大きな力に引っ張られるかのように、一斉に袋叩きにするという場面が多く見られた。
トランプ氏は、そんなマスコミをフェイクニュースメディアと皮肉り、彼を支持する人々、いわゆるQアノンとされる人々は、反トランプ報道を広めようとするアメリカのメディアを「モッキンバード」と呼んだ。
あとがき
アメリカだけではない。
コロナ禍であからさまになってきた情報規制や言論統制には目に余るものがある。
現在、日本を含めた世界のマスメディアは報道しない自由を行使し、一部の者たちにとって都合の良いことしか報道しないモッキンバードになっているのは確かだ。
例えば、テレビを捨てる、SNSを使わないなどで情報の洪水を遮断すれば、少なくとも権力者都合の偏った情報だけを押し付けられることはないかも知れない。
だが、モノマネドリを殺すには、今のところ人里離れた山奥にでも籠もって文明と距離を置くほかないのかもしれない。
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