「ムーンショット目標」という言葉をご存知だろうか。
これは更に社会を発展させるための技術開発の目標で、内閣府の公式サイトでも告知されているものだ。
この目標・挑戦を達成すれば、次のような課題が解決できるという。
- 少子高齢化による人材不足の解消
- 様々な価値観を持つあらゆる年齢層が生きやすい社会の実現
しかし、この目標には映画やアニメの世界に出てくる近未来でサイバーパンクな香りが漂ってもいるのだ。
ムーンショット目標が意味するもの
もともと「ムーンショット」という言葉は、1960年代に大統領を務めたジョン・F・ケネディの言葉が由来になっている。
ケネディ元大統領は1960年代が終わるまでに「人類を月へ送り、地球へ帰還させる」という目標を発表した。
1963年に彼が暗殺された後も計画は続行され1969年のアポロ計画で、この無謀とも言われる挑戦は表向きには達成されたとされている。
このエピソードが元になり、莫大な費用がかかったとしても達成されれば人類にとって大きな偉業となる「挑戦」や「目標」を指して「ムーンショット」と呼ばれるようになった。
内閣府の掲げる7つのムーンショット目標
内閣府が掲げている7つのムーンショット目標は以下のとおり。
- 2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
- 2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
- 2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
- 2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
- 2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
- 2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
- 2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
これまでSF映画やアニメの世界で語られていた「設定」も中には見られる。
年々、AIなどの科学技術が進歩しており、そんな世界が少しずつ近づいているのかも知れない。
しかし、いまいちピンと来ない人からは「漫画かよっ!」というような声も聞こえてきそうだ。
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/index.html
ムーンショット目標①
2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
具体的には、2050年までに、コンピューターシステム上、もしくわインターネット上において多数のアバター(システム上の仮の自分の人格)とロボットを組み合わせて細かい作業も遠隔操作できる技術を開発する。
2030年までに、1つの作業に対して、1人で10人分のアバターを1人分を操作するスピードと精度でコントロールできる技術を開発するというもの。
目標①からブッとんでる。人体や脳の制約からの解放って、「攻殻機動隊」みたいな感じなのか?いずれ人は体を捨てて、意識だけを機械の身体にインストールするようなイメージが浮かぶ。
つまり最終的には不老不死をを目指しているトランスヒューマニズム論との絡みも見えてくる。これが実現されるならアニメの世界はアニメで無くなるのだろうか。
ムーンショット目標②
2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
目標②は、臓器間で情報のやり取りをするネットワークを構築し、解析することで発症の抑制と予防を実現するというもの。
しかし、モニタリングには体内にチップを埋め込むなどの施術が必要だという。臓器どうしのネットワークということは、臓器ごとにチップ的なモノが必要ということなのか。
しかし、のちのち機械の身体を使うようになるのなら、臓器そのものがいらなくなるかもしれない。
また、病気になる人がいなくなれば、「人生100年時代」の日本では奴隷労働させるのに持ってこいともいえる。ようこそ永遠なる歯車。
ムーンショット目標③
2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
この目標③は、「2030年」と「2050年」までで、どのような「AIロボット」を開発するのかについて具体例をあげている。
人の振る舞いを完璧にこなすAIロボットの登場は、人類の夢の1つ。さらに、自分で考え、自律的に行動するなら、それはもう新しい人類と言えるかも知れない。
個人的な感想だが、人体の機械化よりは人間っぽいロボットが登場する方が受け入れやすく感じる。
自律型AIロボットの開発により実現されること
- ゆりかごから墓場まで、人の人生に寄り添い、ともに成長するパートナーとしてのAIロボット
- 宇宙空間や他の惑星での自律的な探索作業の実現
- 肉体労働などのマンパワーの効率化と労働力の確保、労働災害ゼロを実現
- 災害時の人命救助から復旧までを自律的に行うロボットシステムの構築
自分で考え、行動する自律型AIロボットの開発により、実現されうる事は上記のとおり。
マンパワーの確保には限界がありますから、災害時や人が活動できない環境下ではAIロボットの活躍は大いに期待できる。
また、将来的にはAIロボットが家の管理や子供の世話をするようになり、託児所や保育園などに子供を預けるということも無くなるのか。
なんとなく、アイザック・アシモフ原作のSF映画「アンドリューNDR114」を思い出してしまった。
ムーンショット目標④
2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
上記の目標④は、環境問題を解決と地球環境の再生について。
- 地球温暖化問題の解決
- 環境汚染問題の解決
地球温暖化問題の解決
2030年までに、温室効果ガスの循環技術、またはその試作品の開発。
環境汚染問題の解決
2030年までに、環境汚染物質を無害化する技術、またはその試作品の開発。従来は、回収したゴミなどを資源に転換していた。
しかし、回収されず自然界に捨てられたゴミは環境を壊す原因になっている。
これまでとは違い、捨てられたプラスチックゴミが自然に分解され無害化されれば、環境への悪影響も軽減できるかもしれない。
だからといって、好き勝手にゴミを捨てて良いワケではないのだが。
ムーンショット目標⑤
2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
目標⑤は、食料供給に関するもの。
環境を守りながら地球規模で無理のない食料生産システムの構築を目指す。
土の中を完全制御
土の中を完全にコントロールし実現すること。
- 土壌微生物を解明し微生物の機能だけで食糧増産を実現
- 化学肥料がゼロでも食糧増産を実現
- 気候変動に対応した植物の生産を実現
生物の力をフル活用
森林伐採後の残材を昆虫等を使い飼料化、食品化、燃料化
食品ロス・ゼロ
家庭から出た、食べ残しなどの食品残渣を粉状・カートリッジ化し、3Dプリンタを使用して再食品化を実現。
これにより、食品ロスのゼロを目指す。3Dプリンタって結局これのために作られたのだろうか。
よくアニメとかである、ボタン押したらワンタッチで料理が出てくる近未来はもうすぐそこに。
ムーンショット目標⑥
2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
目標⑥は、汎用型量子コンピュータの開発に関するもの。
量子コンピュータと量子技術を利用して、さまざまな分野でイノベーションを起こし、より便利な世の中を目指す。
身近なところでは、量子コンピュータによる大規模シミュレーションにより、次のことを実現するというもの。
- 交通渋滞の緩和
- 天気予報の精度の向上
- 災害の早期警報
- 企業価値の高精度予測
- 金融商品の取引戦略強化
天気予報なんかは今でもかなり精度があると思うが、さらに的中率が上がるのだろうか。
あと、金融商品という言葉があまり好きではないので、これは正直どうでもいい。
海外の資本家・投資家には、日本の職業のジャンル、業界自体が金融商品と見なされている現実がある。まさしく、日本が売られていってるのだから。
ムーンショット目標⑦
2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
目標⑦も医療と健康に関するものになっている。
2040年には100歳以上の人が30万人になると予想される。少子高齢化問題を解決し、100歳まで健康不安なく人生を楽しめる社会をの実現をうたっている。
でも、これって聞こえは良いが、年輩の方が100歳まで働かされるような社会へ向けて着々とことが進んでいるように感じるのだ。
老後に優雅な隠居生活なんて、これからは幻想になっていくのだろうね。
あとがき
大真面目にアニメや漫画の世界の実現を目指し推し進める内閣府の闇が深い深すぎる。
ムーンショットがホントに人類や自然環境のためであるなら良いのだが、狙いは別のところにあるように思えてならない。
庶民から自由やら権利を奪ったあげくに、上級国民が大好きな利権で儲けるとかの絡みも裏で色々とありそうだ。