2004年のある夜、ネット掲示板「2ちゃんねる」に謎のメッセージが書き込まれた。
これは「きさらぎ駅」と呼ばれるネット上で広く知られている都市伝説。
ハンドルネーム「ハスミ」と名乗る人物が異世界に迷い込んだ体験談を実況形式のスレットに投稿したことからはじまった。
存在しない架空の「きさらぎ駅」を舞台に繰り広げられた一夜限りの奇妙な体験談は瞬く間にネット上に広がっていったという。
きさらぎ駅
最初の書き込み
ハスミが最初のメッセージを書き込んだのは、23時23分だった。
投稿時間もゾロ目で、興味深いものがあった。
この書き込みに興味を抱いたオカルト板の住民たちがハスミに質問していくにつれ、彼女の置かれている状況が次第に明らかになっていく。
- 新浜松駅からの電車で静岡県の私鉄は遠州鉄道だけ
- 運転席は目隠しされていて車掌と運転手の様子が分からない
- 乗っている電車は23時40分の電車
そして、「きさらぎ駅」という見知らぬ無人駅で電車は停車した。
きさらぎ駅で下車
やっと停まった駅でハスミは降り立った。
「きさらぎ駅」のホームは薄暗く、時刻表もない。
また、駅名標には前後の駅の名前も無いというナイナイづくしであった。
不審に思ったハスミは駅の周辺を散策するが、民家も無ければタクシーもいなかった。
暗闇に取り残され不安に襲われるハスミだったが、見知らぬ土地でじっとしていても埒が明かないと思い、線路を歩いて帰宅しようと覚悟を決めた。
怪奇現象に遭遇
夜遅い時間だというのに、遠くの方から微かに太鼓と鈴の音が聞こえてくる。
どこかで祭りでもやっているのかなと思ったが、妙な胸騒ぎを感じていた。
線路を来た方向に向かって歩いていると、「線路を歩いたら危ないよ」と後ろから声を掛けられた。
振り向くと片足だけの老人がそこに立っていた。
ハスミは話しかけようとしたが、老人はすぐに消えてしまった。
ビックリして一瞬呆気に取られたが、気を取り直して太鼓の音の方に向かうべく「伊佐賀トンネル」を抜けようと線路を進んでいった。
トンネルの先に男が
トンネルの抜けた先には男が立っていた。
ハスミは男に事情を説明すると、ビジネスホテルのある近くの駅まで車で送ってくれるという。
男にその駅について尋ねると静岡県富士市にある「比奈駅」と答えた。
比奈駅は新浜松駅から100kmも離れており、近くもない距離だった。
ハスミが、男との一連のやり取りをスレッドに書き込むと、オカルト板の住人たちから「男の車に乗ったらダメだ!」という声があがった。
しかし、一人で心細かったことや、一刻も早く家に帰りたかったハスミはオカ板住人たちの言葉に耳を貸さず、男の車に乗り込んでしまった。
車の中から実況を続ける
ハスミは車で移動しながら実況を続けていた。
車は山の方に向かっていたという。
車を運転している男はだんだん口数が少なくなっていき、やがて訳の分からない独り言をつぶやきはじめた。
その頃にはハスミも男に対して何とも言えない薄気味悪さを感じていた。
最後の書き込み
携帯のバッテリーが切れそうなことに気づいたハスミは、
検索してはいけない2ちゃんねるの都市伝説
きさらぎ駅の後日談
2011年に都市伝説のまとめサイトのコメント欄にハスミと名乗る人物から生還報告と思しき投稿があり話題になった。
再び現れたハスミの話によると、最後の書き込みをした後、「はすみ」の乗っていた車は謎の光に包まれたという。
そして、まばゆい光の中で「はすみ」に語り掛ける声があった。
「男は消した、車を降りて光の射す方へ行きなさい」と優しく語りかける声が聞こえた。
隣を見ると運転席の男は確かに居なくなっていた。
ハスミは声の通りに従うと気を失った。
次の瞬間、ハスミが目を覚ますとそこは最寄り駅だった。
浦島太郎よろしく7年の月日が経過していた。
ハスミには、その空白の7年の記憶が無かった。
きさらぎ駅から「異界駅」というジャンルが産まれた
その後、ネット上では「きさらぎ駅」に乗っかる形で似たような架空の駅に関する体験談の投稿が相次いだ。
そして、存在しない駅に関する都市伝説は「異界駅」モノと呼ばれるようになった。
また、2014年には「Googleマップ」上において、何者かが筑波大学の構内に「きさらぎ駅」をスポット登録し、架空のルート検索ができるようになるという奇妙な出来事が起きている。
異界への入口は、私達のすぐそばにあるのかもしれない。
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