不思議な話

【世界の七不思議シリーズ⑥】ロドス島の巨像の都市伝説

古代の七不思議の一つに「ロドス島の巨像」というものがある。

ロドス島の民は戦争の勝利を祝い、太陽神への感謝の証として、高さ50メートルもの巨像を建てた。

このギリシャのロドス島を守護する巨像は、世界七不思議の一つになっているだけでなく、都市伝説めいたエピソードも存在する。

ロドス島の巨像

 

紀元前3世紀、リンドスのカレスはエーゲ海南東部の島、ロドスに太陽神ヘリオスの彫像を建造した。

カレスは、古典時代の三大彫刻家の一人リュシッポスの弟子だった。

像の全長は34メートルで、巨像が2本の足で踏みつけている台座も含めれば約50メートルの高さになる。

これは、今もニューヨークに鎮座する自由の女神像に迫る大きさだった。

巨像のモデルになっているヘリオスは、太陽神のソルやアポロンと同一と扱われていたため、アポロの巨像とも呼ばれる。

ロドス島戦記

アポロン神殿

紀元前323年、マケドニア帝国の王アレクサンドロス3世が死去した。

王には後継者がいなかったため、残された将軍たちによる権力争いが起き、後継者戦争が勃発した。

この戦争で、ロドスはエジプトを治めていたプトレマイオス1世に協力した。

紀元前305年、プトレマイオスのライバルであったアンティゴノス1世は、息子のデメトリオスを4万の兵とともにロドスへ派遣した。

城壁で囲まれたロドス要塞の守備は固く、デメトリオス軍は攻めあぐねていた。

城壁を突破すべく、ヘレポリスと呼ばれる攻城塔を作り、近づこうとするが、一歩手前でロドスの守備隊に阻止された。

さらに、翌年プトレマイオスの軍隊がロドス島に到着したことで、デメトリオスは撤退を余儀なくされ、ロドス侵攻は失敗に終わった。

ロドスの民は、この勝利に歓喜し、太陽神ヘリオスへの感謝の印として彫像を建てることにした。

ロドスの巨像の姿

 

ロドスの巨像は、港の入り口付近に設置された。

像が乗る台座の高さは15メートルで大理石で作られた。

台座の上には、鉄骨が作られ、外装は薄い青銅の板で周りを覆った。

建造中の足場は、盛り土の傾斜路が使われた。

組み立てが進むにつれて、傾斜路の高さを調節していったようである。

彫像の高さは、34メートルで台座を含めた全高は約50メートルに達したとされる。

巨像の完成には12年の歳月が費やされた。

地震で倒壊した巨像

 

それから58年後の紀元前226年、ロドスは大地震に見舞われる。

巨像は膝からポッキリと折れ、倒壊した。

プトレマイオス3世は、再建のため資金提供を申し出たが、ロドスの民に拒否された。

ロドスの民は、神に似せた像を作ったことが神の怒りに触れたのだろうと考えた。

その後、巨像の残骸は800年にわたり放置された。

残骸の見物には多くの人が訪れたが、イスラム教の預言者ムハンマドの側近だったムアーウィアの軍にロドスが征服されたあと、商人たちに売却された。

商人は破壊した彫像のスクラップをラクダに乗せて持ち去ったという。

彼らは、イスラム教徒で巨像のような偶像崇拝を認めていなかった。

ロドスの巨像の都市伝説

Colossus of Rhodes

ロドスの巨像は、跡形もなく消え去った。

7世紀以降の人々は、その姿を知る由もなく、想像するしかない。

そして、多くの不可思議な伝説が生まれた。

ロドスの巨像は港口を跨いでいた

巨像が港口をまたぐ姿勢をとっていたという伝説が存在する。

港から海への出入り口、2つの防波堤の両端に巨像の足が乗る台座が設置されていたと広く信じられていた。

しかし、港口をまたぐ姿勢は全長が大きくなりすぎて、強度が弱まるため、現在では有り得ないと考えられている。

巨像は不法侵入してくる船を追い払う兵器だった

都市伝説はまだある。

巨像は手に器を持っていた。

その中には煮えたぎった油や鉛が満たされていて、港に船が侵入してくると、器が傾き、中身を浴びせかける仕掛けになっているというものだ。

自由の女神の足下に残された巨像の姿

 

ニューヨークの自由の女神像の台座の内部には、アメリカ詩人エマ・ラザラスが自由の女神とロドスの巨像を描写したとされる詩が飾られている。

“Not like the brazen giant of Greek fame,
With conquering limbs astride from land to land”
地と地を跨ぐ征服の脚を持つ、
名高きギリシャの真鍮の巨像とは異なり

出典:ウィキペディア

ロドスの巨像の再建問題

 

このように不思議な伝説が残るロドスの巨像だが、再建問題が持ち上がるたびに、資金不足のため断念されている。

ロドスの巨像の再建は観光事業に大きな影響を与えると考えられるが、その肝心な建設費用は非常に高額なのだという。

これから先、ふたたび巨像が復活する未来は来るのだろうか。

リンドスのカレスは自殺した?

建設の指揮を執った「リンドスのカレス」は、実は巨像が完成する前に自殺したのではないかという2つ説が残っている。

①欠陥工事を指摘され彫刻家としてのプライドが傷つけられ

1つ目の説は、彫像の完成まぎわの段階で欠陥工事を指摘され、彫刻家としてのプライドが傷つけられ自殺したというものだ。

②建設費用の見積もりミスに気づき

2つ目の説は、建設費用の見積もりをミスって、費用が途中で底をつきというもの。

ロドスの民がカレスに「高さ50フィート彫像を建てるのにどのくらいの費用が掛かるのかと」と質問すると、カレスは工事にかかる費用を答えた。

すると、今度はその倍の大きさの彫像を建てるとしたらいくら掛かるのか聞かれ、大きさが倍になれば費用も倍額になると答え、この建設プロジェクトの契約は結ばれた。

しかし、のちに彼は大きさが倍になると費用が8倍になるのが正解だったと気づき、建設費用が底をつき、責任を取って自殺したというもの。

でもこれが、ホントなら費用が足りなくて巨像は完成していなかったはずで、この説は微妙である。

それとも、カレス亡きあと、どこかの大富豪が「不足分、出そうか」としゃしゃり出てきたとでもいうのか。

あとがき

かつて、アメリカ海軍の駆逐艦「バッチ」もロドスの巨像の呪いを受けた。

1960年代、バッチはロドス島に寄港した際、港の外で座礁し、廃棄された。

巨像はもういない。

しかし、侵入者を阻む呪いは今もなお存在し続ける。

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