21世紀最大の航空ミステリーとされるマレーシア航空MH370便失踪事件。
2014年3月8日の午前0時41分ごろ、クアラルンプール国際空港を飛び立ったマレーシア航空MH370便(ボーイング777型機)は、同日の午前6時30分に北京首都国際空港に到着する予定だったが、忽然と姿を消した。
これまで機体の一部が発見されただけで、機体本体および搭乗者は依然として見つかっていない。時に疑わしい場所が浮かんできたとしても、どうにもならないこともある。
- マレーシア航空370便航空機失踪事件にまつわる謎について
マレーシア航空MH370便失踪の謎
最後の交信がおこなわれたのは2014年3月8日「午前2時22分」でインド洋上の衛星が捉えたのを最後にマレーシア航空MH370便は跡形もなく消えた。
同機の捜索、救助活動は航空史上、最大規模のものとなった。
捜索活動は海上船舶や航空機、ソナー画像と水中ドローンを装備した潜水艦などを駆使しておこなわれたが、行方不明となったボーイング777型機を発見することは出来なかった。
捜索に当たっていたマレーシアや中国、オーストラリア政府は2017年1月に作業停止を発表したが、今なお個人的に捜索活動を続けている者がいる。
同機の失踪後の1年半後に機体の一部が発見されたが、操縦席の会話が録音されているというブラックボックスは見つかっていない。
この謎の航空機失踪事件にはさまざまな謎や陰謀論が囁かれているのだ。
ハイジャック説
まず、ハイジャック説が疑われた。
- ポーリア・メフルダド
- デラヴァル・ムハンマドレザ
タイで盗まれたパスポートで同機の搭乗をはかった2名のイラン人の存在が判明し、事件との関与が疑われたが、のちに無関係であることが分かった。
2人はそれぞれドイツとイタリアへの渡航を計画していたという。
シャー機長の自殺陰謀説
ザハリエ・アフマド・シャーは、失踪したマレーシア航空MH370便の機長だった。
この事件は、シャー機長がある目的を遂げるために起こしたハイジャック事件だとする陰謀説が囁かれている。
それは、シャー機長が同機で政治的策略への抗議の自殺、もしくはインド洋に浮かぶ「ディエゴ・ガルシア島」にある米海軍基地に向かったとするものである。
ディエゴ・ガルシア米海軍基地
ディエゴ・ガルシア島とは、インド洋のイギリス領チャゴス諸島にある島で、宗主国イギリスから時限的にアメリカ合衆国に貸し出されている。
この島に作られた米海軍基地は、グアンタナモ基地ほどの悪評は聞かれないが、CIAの秘密軍事施設といわれている。
また、インド洋にあるアメリカ軍最大の拠点であり、軍事戦力上の要衝とされる。
- 湾岸戦争
- アフガニスタン侵攻
- イラク戦争
2016年には貸与契約が2036年まで再延長された。
ディエゴ・ガルシア空港は、滑走路を4000m級に拡張されたことで、戦略爆撃機の離発着が可能になり、港湾部は空母や原子力潜水艦の補給が可能なレベルにまで配備された。
シャー機長の疑惑①離陸前に電話?
シャー機長はMH370便が離陸する3分前に携帯電話から掛かってきた電話を受けており、のちにその携帯電話は、身元を偽った人物が購入したものだと判明した。
はたして、この電話の主は誰で何を話したのか。
シャー機長の疑惑②飛行シミュレーター
シャー機長のハイジャック説にイギリスやアメリカの全国紙が興味を示した。
MH370便が失踪する前日、シャー機長と妻と3人の子供たちは自宅を引き払っている。
そして、シャー機長の電子手帳と思しきものが発見されたが、2014年3月8日以降のスケジュールは公私ともに削除され空欄になっていた。
各紙は、シャー機長の自宅には6つのスクリーンを備えた「飛行シミュレーター」が設置されており、ボーイング777型機をディエゴ・ガルシア空港の滑走路に着陸させる練習を繰り返していた形跡があると報じた。
シャー機長の疑惑③クダウーバッドホーの目撃者
モルディブのハヴィール紙もこの説を支持し、2014年3月8日、インド洋モルディブ諸島の1つ「クダウーバッドホー」の住民の証言を載せた。
住民は3月8日の朝6時ごろ、上空を通過する大きな音で目が覚めた。
外へ出てみると、機体は白で赤と青のラインが入った飛行機を目撃したのだという。
このデザインはMH370便と同じデザインである。
同機はレーダーで探知されないように、低空飛行で島民の頭上を通過して南東へ向かった。
その方角には、ディエゴ・ガルシア米軍基地がある。
シャー機長の疑惑④アンワル・イブラヒムとの関係
シャー機長は、マレーシアの野党である人民正義党のリーダー、アンワル・イブラヒムの遠縁にあたり、その熱心な支持者だった。
人民正義党は、イスラム教徒が優勢なマレーシアで根強い人気を築いており、与党連合にとっては目の上のたん瘤のような存在であった。
与党連合はイブラヒムを同性愛者に仕立てあげ、2008年7月には異常性交の罪をでっち上げて逮捕させたが、裁判で提出された証拠のDNAに捏造の疑いがかかり不起訴となっていた。
ところが、シャー機長が消息を絶つ前日の2014年3月7日、イブラヒムの無罪判決が撤回され、再び起訴されたが、これはイブラヒムを3月23日の選挙戦から引きずり下ろすことが目的ではないかとされた。
また、イブラヒム氏は、自分が起訴されたことへの抗議のためにシャー機長が乗客を巻き込み無理心中を図ったと報じたメディア対し、野党とイブラヒムがこの事件に関与していると思わせるためのプロパガンダだと批判している。
マダガスカルにおるマレーシア名誉領事ザヒド・ラザ
ザヒド・ラザ氏はマダガスカルのマレーシア名誉領事(外交官)で航空機失踪事件の究明に奔走していた人物だった。
2017年8月24日、彼はマダガスカルの首都アンタナナリボで車の運転中に後ろから近づいてきたバイクに乗っていた男に銃殺され、これはプロによる犯行だと発表された。
当時、アフリカ東海岸沿いにMH370便の部品や積載物とされるものが多数発見されていた。
マレーシアとマダガスカル当局によると、MH370便の残骸はすべてラザ氏に引き渡し、国際便でマレーシアに送る予定だったという。
ラザ氏の残したメッセージとは
ラザ氏は死の直前、アメリカ人の友達で墜落事故調査員のブレイン・ギブソン氏にメッセージを残していた。
ラザ氏のメモには、「これまで見つけた残骸よりも遥かにすごいものを手に入れた」と記されていたが、その証拠の品はいまだに見つかっていない。
彼は、この1ヶ月ほど前から、調査から手を引かなければ命は無いと何者かに脅されていた。
ロシアはアメリカによる策略を示唆
ロシアは独自の見解を示している。
それは、アメリカ軍がMH370便に乗っていた中国人科学者たちを拉致するために、この失踪事件を起こしたとするものだ。
中国の科学者たちは、戦闘機や爆撃機などを完全に探知不能にする技術を握っており、アメリカ軍はどうしても、その技術を手に入れたかったというのである。
この日、科学者たちがMH370便で中国へ帰国すると知ったアメリカ軍はディエゴ・ガルシア基地を利用し、秘密作戦を実行したのだろうか。
機長がシミュレーションどおりに任務を遂げたのなら乗客は無事のはずで、いまも島で生活しているのか、知らぬ土地で別の名で人生を歩んでいるのかもしれない。
あとがき
多くの疑惑を残しながらも、未だにマレーシア航空機失踪事件の真相は不明である。
シャー機長がイブラヒム氏の政治的策略への抗議のために、MH370便を海に沈めたというのなら、その動機を示す遺書が必要であるが、そのようなものは見つかっていない。
もし、それがマレーシア政府の手中にあるとしても、この秘密は永遠に明かされることはないだろう。
そして、ラザ領事が命を掛けてまで持ち帰ろうとしたモノとは、いったい何だっだのか。
調査を続けるギブソン氏は、航空機失踪事件と友の死の謎を解く手がかりはディエゴ・ガルシアにあると考えている。