サトシ・ナカモトはビットコインの生みの親として世界的にも有名な人物だが、その正体は分かっていない。
名前から日本人男性のようにも思えるが、ハッキリとした性別も個人かグループなのかも不明でどうにも謎の存在だ。
そんな謎の存在の正体をめぐっては様々な説が囁かれている。ビットコイン作者「サトシ・ナカモト」とはいったい何者なのか。
サトシ・ナカモトの出現と消失
サトシ・ナカモトがメーリングリストやビットコインフォーラム(掲示板)で活動していた期間は、「2008年10月~2010年12月」とされる。
サトシの出現から消失までを見ていこう。
サトシ・ナカモトが論文を発表
サトシ・ナカモトが出現したのは2008年10月31日。
暗号理論に関するメーリングリスト「Cyptography」にサトシナカモト名義の論文「Bitcoin: A peer to peer Electronic Cash System」が投稿された。
ブロックチェーンは参加者がお互いを信頼しないことで安全性が保たれており、中央で台帳を管理する仕組みが存在しない。
つまり、みんなが台帳を持っている感じで、誰かが取引を不正に書き換えたとしてもブロックの辻褄が合わなくなり不正が発覚する仕組みになっている。
ビットコインのソフトウェアを発表
翌2009年1月、サトシはビットコインのソフトウェアが発表し運用を開始した。
メーリングリストのメールには、彼が2007年からビットコインの開発に取り組んでいた記述が見られる。
2009年2月には、ファイル共有システムの研究組織「P2P Foundation」の掲示板でサトシがビットコインを紹介している。
ビットコイン初の取引が記録される
サトシはビットコインの報酬受け取りと送金をした最初の人物でもある。
ブロックチェーンの最初のブロックには、50ビットコインが送金された取引が記録されている。
ソフトウェアの公開にともない、その数日前からサトシはマイニングのテストをおこなっていて、ビットコイン初のブロックが生成された。
最初のマイニング報酬は50BTCでそれはサトシのビットコインアドレスへ送金された。
サトシはしばらくビットコインのシステム開発に携わる
サトシは2010年の中盤までビットコインのシステム開発に真剣に取り組んでいた。
しかし、その後徐々に開発や運営を他者に任せるようになり遠ざかっていった。
ビットコインのプロジェクト管理は開発の初期メンバーだったギャビン・アンドレセンに、サトシが所有していたwebサイト「bitcoin.org」の管理も、他のメンバーに任せることにした。
サトシ・ナカモトの消失
サトシは2010年12月12日、ビットコインフォーラムでの最新のソフトウェアについての投稿を最後に姿を消した。
サトシナカモトは100万BTCを保有している
ビットコインの創造主たるサトシ・ナカモトはいったいどのくらいのビットコインを持っているのだろうか。
一説によれば、サトシは100万BTC(約2兆円)を保有していて、ビットコインが誕生してから一度も使われていないという話もある。
ビットコインが稼働をはじめてから、しばらくの間はサトシが一人でマイニング(採掘)していたから、初めてマイニング報酬を受け取った人物もサトシになる。
サトシナカモトの正体とは
サトシ・ナカモトは日本のメディアでは「謎の日本人」として紹介されることがあるが、その正体については諸説あり、テック業界においても未だ解明されていない謎の1つである。
サトシ・ナカモト日本人説
「サトシ」も「ナカモト」も日本人によくある名前であり、そこから判断すれば日本人男性ではと考えてしまう。
しかし、サトシは英語が堪能だったとされ、彼の発表したビットコインの論文には日本語が使われておらず、日本人説を疑問視する見方も存在する。
サトシ・ナカモトはグループ名説
サトシがビットコインのソフトウェア開発を始めた当初は、共同作業のプロジェクトだったとされる。
そのため、サトシとは特定の個人ではなく、開発に関わったグループのメンバーが共有で使っていたニックネームだという主張もある。
サトシナカモトはイギリス英語を使う人物?
ソフトウェアのソースコードに残されているコメントやフォーラムの投稿には、「イギリス英語」のつづりや慣用句が使われている。
例えば、「bloody hard」といった独特な表現の使い方がサトシを推測するヒントであると言われ、彼はイギリス英語を使う人物だという意見もある。
サトシ・ナカモトは北米か中央アメリカ、南米に住む人物?
スイスのプログラマーでビットコインコミュニティのメンバー「ステファン・トーマス」は、サトシの所在を突き止めるため、彼がビットコインのフォーラムにコメントを投稿した時間帯をグラフ化した。
すると、グリニッジ標準時の午前5時から11時(日本時間14時から20時)の時間帯には、土日も含めほぼ投稿がないことが明らかになり、この時間帯はサトシの睡眠時間なのではないかと推測された。
サトシが個人であり普通の睡眠時間の持ち主であるなら、彼が住んでいるのは「UTC-05:00」か「UTC-06:00」の地域と推測され、北米の東部・中部標準時や中央アメリカの西インド諸島、南米がこれに当てはまる。
サトシ・ナカモトの正体についての様々な説
これまでも、サトシ・ナカモトの正体については、以下のように新たな主張と否定が繰り返されている。
2011年、ジャーナリストのジョシュア・デービスの主張
ジャーナリストのジョシュア・デービスは、サトシの正体はフィンランドの経済学者Vili Lehdonvirtaとアイルランドのダブリン国立大学で暗号理論を研究していた学生Michael Clearのどちらかだと主張したが、両者は強く否定している。
2011年、ジャーナリストのアダム・ペネンバーグの主張
ジャーナリストのアダム・ペネンバーグは、サトシの正体はニール・キング、ウラジミール・オクスマン、チャールズ・ブライのグループのことであり、それを証明する間接的な証拠があると主張した。
それには、2008年に彼らが出願した特許の書類が含まれていたが、3人は全員サトシ・ナカモトではないと否定した。
望月新一説
2013年、アメリカの社会学者テッド・ネルソンは、サトシ正体は日本の数学者・望月新一だと主張した。
望月氏は京都大学教授で出身校のプリンストン大学時代は天才として名が通っていた。
オーストラリアの新聞社ジ・エイジには、それを望月氏が否定したとする記事が掲載された。
仮想通貨取引所「マウントゴックス」創立者ジェド・マケーレブ説
サトシの正体は、ビットコインの取引所「Mt.Goxマウントゴックス」を立ち上げたジェド・マケーレブだと言われたこともある。
マケーレブはファイル共有サービスOvernet、eDonkey2000の創始者であり、ビットコインを支えた人物の1人である。
セキュリティー研究者ダスティン・トランメル説
テキサスのセキュリティー研究者ダスティン・トランメルがサトシではないかと疑われたが、本人が否定している。
ニック・サボ説
コンピューターサイエンティストのニック・サボがサトシではないかと疑われることもあったが、彼は繰り返し否定している。
サボは「ビッドゴールド」という分散型デジタル通貨のシステムを設計していて、実装されてはいないが、これがビットコインシステムの元になったと噂されているからだ。
ドリアン・ナカモト説
2014年3月、ジャーナリストのリア・グッドマンはニューズウィークの記事でカリフォルニア州在住のドリアン・ナカモト氏64歳の出生名がサトシ・ナカモトであったことに目を付け、彼こそがサトシ・ナカモトだと主張した。
しかし、ドリアン・ナカモト氏はこれを否定している。
また、同じ日に「P2P財団」にサトシのアカウントで「私はドリアン・ナカモトではない」というメッセージが投稿されたという。
クレイグ・スティーブン・ライト説
オーストラリアの実業家クレイグ・スティーブン・ライトは、自分こそがサトシ・ナカモトであるとメディアの前で宣言した。
その証拠として、本物のサトシだけが知っている暗号キーを使って電子著名をしたが、それだけでクレイグをサトシと認定するには証拠不十分だと言われている。
ジョン・マカフィーはサトシの正体を知っていた?
あのセキュリティーソフト「McAfee」の創業者ジョン・マカフィーもサトシ・ナカモトを知っていたという。
マカフィー氏は、サトシと話し合い、彼の正体を明かそうとしていたが、その後、公表のタイミングは未定だと主張を変えた。
「君の正体をバラしてもいいかいと聞くと、サトシは機嫌が悪くなった」とマカフィー氏はインタビューに答えている。
先日2021年6月、スペインの拘置所で亡くなったマカフィー氏はサトシの秘密を墓場に持っていってしまった。
サトシ・ナカモトは金子勇なのか?
金子勇(かねこいさむ)氏は、P2Pファイル共有ソフト「Winnyウィニー」を開発したことで有名な人物。
2002年、東京大学の特任助手時代にウィニーをネット掲示板「2ちゃんねる」のダウンロードソフト板に公開し、該当スレのハンドルネーム「47氏よんじゅうななし」と金子氏は同一人物ではないかと言われている。
ウィニーはビットコインに使われている「ブロックチェーン」のように中央で管理せずともパソコン同士で繋がりファイルをやり取りできる画期的なソフトウェアだった。
しかし、匿名性が高いということもあり、画像や動画、市販ソフトウェアの違法コピーがまかりとおり、著作権問題へと発展していった。
この「Winny事件」では、著作権法違反で逮捕者が続出し、開発者だった金子勇氏も著作権法違反幇助の罪で2004年に逮捕されるが、2011年に無罪になる。
ところが2013年、心筋梗塞で42歳の若さで金子勇氏は亡くなってしまった。
天才技術者を裁判で浪費させ、活躍の場を奪ったことが、その後の日本の損失につながったとも言われている。
ビットコインが誕生してから10年以上経過しているのに、自分がサトシだと名乗り出る者もなく、サトシの正体がすでに亡くなっている金子氏なら辻褄が合うと考える者もいる。
サトシ・ナカモトは誰なのか?
サトシ・ナカモトの正体は誰なのか?
さまざまな説が叫ばれているが、筆者は個人的に「サトシ=金子勇」説に一票いれたい。
金子氏は、ピア・ツー・ピアでファイル共有ソフト「Winny」を作り、「ピア・ツー・ピア」をブロックチェーンのシステムに発展させた。
ビットコインが「peer to peer」の電子キャッシュシステムだとすれば、サトシの正体は、やはり金子氏とするのが、無理のない説なのかなと思う。
また、サトシナカモトの論文には「既存のシステムへの不信感」が垣間見えるという人もいる。
曲解すれば、ビットコインとブロックチェーンはサトシの企てた現代の中央集権的な仕組みへの反逆だったのかもしれない。
これからはサーバー(中央)にお伺いを立てるのではなく、ピア・ツー・ピアで個人が横につながっていく時代だ。
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