アメリカにはCIA、イギリスにはMI6、そしてイスラエルにはモサド。
世界中には数々の諜報機関が存在する。
諜報機関とは情報機関とおなじような意味だが、このような組織はスパイ活動的な側面も持ち合わせていることから「諜報機関」と呼ばれることもある。
これらの組織は国家の安全を守るため、国内外の情報を収集、分析し政府首脳に伝える役目を持つ政府機関である。
しかし、一部には諜報機関がマスコミや各種メディアを利用して大衆洗脳をおこなっているといった陰謀論も存在している。
今回はそんなミステリアスな「諜報機関」ついて見ていこう。
アメリカ中央情報局「CIA」
アメリカの諜報機関といえば、世界中の誰よりきっとCIAが有名だろう。
CIA(Central Intelligence Agency)は中央情報局のことで、表向きには第33代トルーマン大統領の指示で組織されたアメリカ合衆国の対外情報機関とされている。
おもに人的情報を利用して世界中から情報を収集、分析、処理することが任務である。
CIAはアメリカ合衆国国家情報長官の直属の組織であり、アメリカ軍とは独立して存在している。
CIAは創設当初から、イスラエル諜報機関モサドやイギリス秘密情報局MI6(エムアイシックス)とのつながりが深い。
さらに、カナダやオーストラリア、ニュージーランドの情報機関ともUKUSA協定(アングロサクソン協定)を結び横のつながりも保持している。
アメリカ国家安全保障局「NSA」
NSA(National Security Agency)は、アメリカ国防総省ペンタゴン直轄の情報機関である。
公式では「海外情報通信の収集と分析」が任務とされていて、雇用者数は約3万人で年間予算は約108億ドル(約1兆800億円)、世界中に80ヶ所の拠点があり、在日米軍三沢基地にも関連施設があると言われる。
CIAが「ヒューミント」と呼ばれるスパイなどの人間を使った諜報活動を担当するのに対し、NSAは「シギント」という電子機器を使った情報収集活動と分析を担当する。
その前身は1949年に設立された「AFSA(軍保安局)」で、組織の性質上諸外国の高度な機密情報、いわゆる大統領ですらアクセスできないレベルの情報も扱っているため、詳しい活動内容や予算などについて分かっていない事も多い。
以前は組織の存在すら国民に知らされておらず、あまりに秘密主義過ぎたため「NSA」の頭文字は以下の言葉の「略」ではないのかというジョークが定番だった。
- Never Say Anything(何もしゃべるな)
- No Such Agency(そんな部署はない)
イギリス秘密情報部「SIS・MI6」
イギリスには、映画「007」で有名な諜報機関、MI6(エムアイシックス)がある。
秘密情報部SIS(Secret Intelligence Service)は、MI6の通称で広く知られているイギリス諜報機関の1つである。
SISは、国外の政治や経済、その他の秘密情報の収集と情報工作を任務としていて、人員は2,500人で約3億ポンドの予算だとされる。
映画や小説などで古くから知られていたが、1994年までイギリス政府はその存在を公式に認めていなかった。
第一次世界大戦後には、個々の情報組織にMI1~MI6までの名称が割り当てられた。
- MI1・・・政府通信本部で暗号、暗号解読を担う。
- MI2・・・中東、極東、スカンディナヴィア、アメリカ州、ソ連
- MI3・・・東欧、バルト海沿岸諸国
- MI4・・・地図作成
- MI5・・・防諜
- MI6・・・SIS
イスラエル諜報特務庁「モサド」
イスラエルの情報機関といえば、その実力はCIA以上とも言われる「モサド」だ。
モサドはイスラエルの情報機関であり、正式名称は「イスラエル諜報特務庁」である。
モサドという言葉はヘブライ語で組織や施設、機関を意味する「מוסד :Mossad」から来ていて、英語ではISIS(Israel secret intelligence service)と呼ばれている。
組織は首相府直轄で、以下のような活動を担当するが、活動の根拠となる法律が存在しないため、法的には存在しない組織となっている。
- 情報収集
- 秘密工作(準軍事活動や暗殺を含む)
- 対テロ活動
- 逃亡中の元ナチ戦犯やテロリストの捜索
おもなターゲットはアラブ国家の敵対国で、組織拠点は世界の至る所に存在する。
ロシア対外情報庁「SVR」
SVR(ロシア対外情報庁)は、本部をモスクワに置くロシア連邦の諜報機関である。
旧ソ連時代に存在した「KGB」で対外諜報を担当していた第一総局の後継機関でもある。
SVRの組織図は存在しないことになっているが、朝日新聞の問い合わせに対し、広報は存在を認めている。
中華人民共和国「国家安全部」
国家安全部は、中国の諜報機関である。
国家安全部の組織は「第1~17局」で構成されているが、以下に第10局までを引用する。
- 第一局(機要局)暗号通信及び管理
- 第二局(国際情報局)国際戦略情報収集
- 第三局(政経情報局)各国政治経済・科学技術情報収集
- 第四局(台港澳局)香港、マカオ、台湾情報工作
- 第五局(情報分析通報局) 情報分析通報、情報収集業務指導
- 第六局(業務指導局)所轄各省庁業務指導
- 第七局(反間諜情報局)対スパイ情報収集
- 第八局(反間諜偵察局)外国スパイの追跡・偵察・逮捕等
- 第九局(対内保防偵察局)渉外組織の防諜、監視、内部反動組織や外国組織の告発
- 第十局(対外保防偵察局)外国駐在組織人員及び留学生の監視・告発、域外反動組織活動の偵察
出典:ウィキペディア
日本の諜報機関
日本のスパイといえば、古くは室町時代から江戸時代の頃に「忍び」や「隠密」という名で知られてきた。
現代の日本では、内閣情報調査室「CIRO」とその下部組織である防衛省情報本部「DFS」が諜報機関にあたるようだ。
内閣情報調査室「CIRO」
内閣情報調査室(Cabinet Intelligence and Research Office)は、内閣官房に属する情報機関で通称「内調」や頭文字を取って「CIRO」と呼ばれる。
日本政府の情報機関を取りまとめる組織で、国内外の特異情報を総理大臣に直接報告している。
とはいっても、情報収集の実働部隊は以下の組織が担当しているので、あくまで総合的な情報の集積所的な立ち位置である。
- 防衛省情報本部・・・シギント(通信情報)で国内の諜報、防諜を担当
- 公安調査庁(公安警察)・・・ヒューミント(人的情報)で諜報活動を担当
内閣情報調査室は、「日本版CIA」を目指して設立された機関である。
防衛省情報本部電波部「DFS」
防衛省情報本部電波部、通称「DFS」は日本の諜報機関で内閣情報調査室が統括している。
その任務は、電波情報の収集と分析(シギント)である。
情報収集の手段と名称
情報収集の手段には、「○○ + イント」という名称が付いている。
「イント」は情報や頭脳という意味の英単語「Intelligence(インテリジェンス)」の最初の3文字から取られている。
そのいくつかを紹介する。
ヒューミント(HUMINT:Human)
ヒューミントとは、人間による情報収集のことをあらわす。
また、この言葉は「協力者」の獲得と運用という意味も含んでいて、他国の組織に潜入する協力者を「スパイ」や「エージェント」、「工作員」と呼んだりする。
さらに、異性の工作員を使ったターゲットへの情報収集を「ハニー・トラップ」という。
フォトミント(PHOTOMINT:Photo)
フォトミントは字のごとく、写真撮影による情報収集をさす。
イミント(IMINT:Imagery)
イミントは、偵察衛星や偵察機による写真や画像イメージによる偵察。
イマジント(IMAGINT)とも呼ばれる。
シギント(SIGINT:Signals)
シギントは、電波や電子信号を傍受による情報収集であり、名は信号をあらわす「シグナル」から取られている。
諜報機関陰謀説
諜報機関陰謀説とは諜報機関がマスコミや各種メディアを使って、世論誘導や操作をおこなっているという陰謀説だ。
この陰謀説でよく名前があがるのがCIAやMI6、モサドなどの組織である。
この説によれば、CIAが反共ユダヤ拡張報道機関とされている読売グループを掌握し、プロパガンダのためにテレビ局を立ち上げ、3S政策の急先鋒としてプロ野球団を作ったということになっている。
ただし、読売グループの初代オーナー正力松太郎氏がCIAの協力者だったというのは陰謀論ではなく事実である。
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