不思議な話

シリア内戦とアサド大統領暗殺計画

2010年12月、チュニジアでジャスミン革命が始まり、中東各国は大動乱の情勢に突入した。アラブの春の影響はシリアへも波及して2011年1月26日、シリア騒乱が始まった。

2011年12月、国連の人権高等弁務官事務所はシリア情勢を「事実上の内戦状態」と宣言した。マスコミは「シリア軍が市民を大虐殺している」と報道した。

そこにはシリアだけでなくイランや米国、イスラエルなどのそれぞれの利益や目論みが交錯していた。

イスラム世界の二大勢力

  • シーア派:イラン:ペルシア民族
  • スンニ派:サウジアラビア:アラブ民族

イスラム世界には主に「シーア派」「スンニ派」の2つの勢力が存在する。シーア派の大国はイランで、スンニ派の大国はサウジアラビアである。

さらに民族の違いを挙げると、イランはペルシア民族でサウジアラビアはアラブ民族である。イスラム世界は一枚岩ではないのだ。

そしてシリアはシーア派である。中東世界ではシリアを挟んで、シーア派(イラン)とスンニ派(サウジアラビア)が権力闘争している。

駐米サウジアラビア大使暗殺計画

シリアのアサド大統領を中東で支えていたのはイランだった。イランと対立するサウジアラビアはシリアの革命を望んでいた。

2011年10月、米国で奇妙な事件が起きた。駐米サウジアラビア大使の暗殺未遂事件である。犯人はテキサス在住のイラン系アメリカ人だった。

彼を雇ったのはイラン革命防衛隊だとされた。この事件が明るみにでると即座にオバマ大統領は次のように述べた。

「わが国は引き続き国際社会に働きかけて確実にイランの孤立化を進め、この種の行為の代償を支払わせる」

米国による邪悪な企み

なぜイラン革命防衛隊は、すぐに発覚するような犯罪計画を実行したのだろうか。いや、その真相は米国政府のイランに対する謀略である。

米国はイランを悪魔的な国家に仕立て上げ、糾弾し、追い詰めたい。これは米国による邪悪な企みだ。

その背後にはユダヤ国家イスラエルが存在する。パレスチナというイスラム世界の中心に位置するイスラエルはイスラムの大国イランを徹底的に破壊したい。それを米国が支援している。

この時、イランのモハマド・カザイ国連大使は国連に抗議書簡を送り、次のように述べている。

「米当局によるこの屈辱的な疑いに対し、イランは断固として、最上級の強い否定をもって非難するとともに、これぞ彼ら(米国)の反イラン政策に沿って考え抜かれた邪悪な計画だ」

「米国内の経済問題、社会問題、そして長年外国の独裁政権たちを支援してきた米政府に対する大衆革命や抗議から目をそらさせるものだ」

「イランは常にいかなる形のテロリズムも非難している。そればかりか、テロリズムの犠牲者でもある。明確な例のひとつは、過去2年の間に米国が支援するシオニスト政権(イスラエル)によって多くのイランの原子力科学者たちが暗殺されたことである」

出典:AFP BB News「イランによるサウジ大使暗殺計画、米当局が阻止と発表」

シリア内戦の真相

2012年6月5日、中露首脳会談が開かれた。そこで両国首脳は「対シリア協調」を確認した。このとき中露首脳は「シリア内乱の真相」を知っていて、シリア擁護に回っているようにも見える。

「ロシアのプーチン大統領は五日、北京の人民大会堂で中国の胡錦濤国家主席と会談した。プーチン氏は共同記者会見で『中東や北アフリカ、朝鮮問題で我々の立場が近い』と述べ、シリア情勢について、体制転換を目的とした欧米の軍事介入に反対する姿勢で協調していくことを確認した」

「朝日新聞2012年6月6日」

この中露会談の翌日2012年6月6日、シリア国内で「市民大虐殺事件」が発生する。

「フランス公共ラジオによると、シリア反体制派『国民評議会』の報道官は6日、シリア中部ハマ県の村で同日、女性や子供約40人を含む約100人が政権支持の民兵などに虐殺されたと語った。英国を拠点とする『シリア人権監視団』は死者を87人としている。詳しい状況は不明だが、両組織ともアサド政権の関与を主張。先月(5月)下旬には西部ホウラ100人以上が死亡した虐殺事件が起きたばかりで、アサド政権に対する国際社会の批判がさらに激化するのは必至だ」

「日本経済新聞2012年6月7日夕刊」

別の新聞の記事では次のように書いている。

「シリアの在外反体制派、シリア人権監視機構などによると、シリア中部ハマ県の村で(6月)6日、政権支持派国民が住民を殺害した。少なくとも24人の死亡が確認されたという。死者数について、別の反体制派、地域調整委員会は86人、シリア国民評議会は100人としている」

「情報をまとめると、女性や子どもを含む住民が殺害され、一部の遺体は燃やされたという。政権側が砲撃したとの情報もある。AFP通信によると、シリア国営テレビは同日、『ハマ県で、テロリスト(反体制派)が住民9人を殺害した』と政権側の関与を否定した」

「朝日新聞2012年6月7日夕刊」

だが、この100人虐殺にアサド政権が関わっているのかは断定できない。アサド政権は住民虐殺などはやっておらず、グローバリストの仕掛けた自作自演の可能性もありうるからだ。

テロリスト(反体制派)の正体は、米国特殊部隊(米国で訓練を受けたシリア人)だとも考えられる。

グローバリストはアサド政権を打倒し、傀儡政権の樹立を虎視眈々と狙っているのだろうか。

資源略奪戦争

「9.11同時多発テロ」が起きた時、米国は「反テロ戦争」の名の下にアフガニスタンとイラクを攻撃した。だがイラク戦争にはもうひとつ別の理由が存在した。それは米国による「資源略奪戦争」だった。

イラクは「文明のゆりかご」と呼ばれるほど農業に関しても数千年の長い歴史を持つ地域だった。だがイラク戦争後、米軍の占領統治により米国の小麦や米産業の最大顧客となっている。

米国政府はイラクを手に入れることで、石油だけでなく巨大な市場を手に入れた。米国はアフガニスタンにおこなったのと同様に国の法律を改正させて、とくに食糧に関しては米国依存を強める政策を徹底的に実行した。

種子備蓄の破壊と食糧ビジネス

これにより、イラクでは自前の農業生産や食糧ビジネスはほぼ壊滅状態となった。そのうえで米国産の種子を積極的に広めた。

農民たちがこれまで伝承してきた種子をすべて捨てさせ、今では米国の種子メーカーが提供する種子や米国の穀物企業から小麦やトウモロコシなどを大量に輸入せざるを得ない状況になっている。

戦争で国家が破壊されることを予見したイラクは備蓄していた種子をシリアへ避難させたという説もあるが、2011年から始まったシリア内戦によりアレッポにあった大規模な種子バンクは使えなくなっている。

シリア軍の化学兵器攻撃

  • 2013年8月21日:グータ化学兵器攻撃
  • 2017年4月4日:カーン・シェイクン化学兵器攻撃

これまでシリア国内のグータとカーン・シェイクンなどで市民を狙った大規模な化学兵器攻撃が確認され、多くの死傷者が出ている。

シリアの反体制派やアラブ連盟、欧州連合、米国、化学兵器使用に関する国連調査団は、この化学攻撃はバッシャール・アル=アサド大統領が指揮するシリア政府軍により実施されたものだと述べた。

これに対し、シリア政府はこの攻撃は反体制派が内戦に外国勢力を引き込むために行った偽旗作戦だと主張した。

これを受け、国連調査団は反体制派が化学兵器を取得した経緯についての政府の説明が説得力に欠け、信頼に値するものではないと述べている。

アサド政権打倒と傀儡政権の樹立

2012年7月18日、シリアの首都ダマスカスの治安司令部で爆発があり、ダウド・ラジハ国防相とアサド大統領の義兄アーセフ・シャウカト副国防相の2人が死亡している。

またカーン・シェイクン騒動後の2017年4月7日には、米トランプ大統領が化学兵器を貯蔵しているとされたシリアのシャイラト空軍基地に対してミサイル攻撃を命じた。

その際、トランプ氏が次のように発言し、アサド大統領の暗殺を指示したとされたが、のちに作り話であると否定された。

「彼をぶち殺そう!やろう。奴らをどんどんぶち殺そう」

Let’s fucking kill him! Let’s go in.Let’s kill the fucking lot of them.

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