地下王国とその住人にまつわる伝説は数千年ものあいだ多くの文化に登場してきた。
これまで地底世界の入り口は北極と南極にあると言われており、エスキモーには「彼らの祖先は、さらに北方にある永遠の太陽に照らされた温暖な土地からやってきた」という言い伝えがある。
歴史ある秘密結社の創設者たちも地球が空洞であることを知っていながら、科学界や権力者を操り、その他大勢の者たちを「地球の内部には岩や石油、高温の内核しかない」と洗脳し、地球の真の姿を隠し続けてきたのだろうか。
南極を調査した人物
奇妙なことに、これまで数か国の政府が「地球空洞説」の調査を試みたとされている。
その中でも有名なのは次の3つのエピソードだろう。
ナチスドイツ
ナチスドイツは、第二次世界大戦が勃発する前まで、いくつかの探索部隊を南極へ送り、地球内部につながる通路を調査させていたことで知られている。
ジョン・クリーブス・シムズ大尉
19世紀、米国政府は軍の英雄だったジョン・クリーブス・シムズ大尉を南極に送り、空洞への入り口を探して内部に居住区を作るというミッションを命じた。
彼は、のちに「シムズ説」と呼ばれる空洞説を唱えた。
リチャード・バード少将
1947年、米海軍のリチャード・バード少将は大がかりな南極観測を命じられたが、その調査の目的が何だったのかは、いまだに不明である。
バード少将の死後、彼の日記が見つかる。そこには南極から地底世界に迷い込んだという不思議な体験談が綴られていた。
今となっては、その真偽は不明である。
地球空洞説とは
地球空洞説には以下のような代表的な4つの説があり、これらの説を応用し、更に進んだアイデアを展開する者たちが現れた。
- エドモンド・ハレーの説
- レオンハルト・オイラーの説
- ジョン・レスリーの説
- ジョン・クリーブス・シムズの説
①エドモンド・ハレーの説
最初に地球空洞説を唱えたのは「ハレー彗星」の名付け親であるエドモンド・ハレーといわれる。
ハレーは、北極と南極の磁気が変化することの原因を次のように考えた。
- 地球内部には中心に核が存在する → 水星と同じ直径の中心核をもつ
- その中心核と外殻(地表)の間に2層の中空が存在する → 金星と火星と同じ直径で厚さ500マイルの2つの外殻でできた空洞地球
②レオンハルト・オイラーの説
オイラーは、「オイラーの公式」や「オイラーの多面体定理」で知られるスイスの数学者だ。
オイラーの説は地球内部は多重構造ではないが、高度な文明が存在し、その中心には直径1000㎞ほどの光輝く太陽が存在するというものだった。
③ジョン・レスリーの説
スコットランドの物理学者ジョン・レスリーは、地球の内部に2つの太陽があるという説を唱えた。
その太陽は、それぞれ「プルート」と「プロセルピナ(ペルセポネ)」と名づけられた。
④ジョン・クリーブス・シムズの説
アメリカ陸軍の大尉だったジョン・シムズは、『同心円と極地の空洞帯』という本を出版して、地球空洞説を唱えた。
シムズの空洞説の特徴は、次のようなハレーとオイラーの説のハイブリッドでイイトコ取りな説であり、初期の地球空洞説の中で代表的な説となっていた。
- 地球の厚さ800マイル(1,300㎞)
- 北極と南極に直径1,400マイル(2,300㎞)の穴がある
- 球体は5層構造
- 地表の海は裏側まで続いている
マーシャル・B・ガードナー
1913年、マーシャル・B・ガードナーは、その並外れた想像力を発揮して『地球内部への旅』を自費出版する。この本を読み感銘を受けたコナン・ドイル(シャーロックホームズの作者)は、ガードナーに手紙を書いている。
ガードナーのアイデアは、地球の両極に直径1400マイル(約2253㎞)の開口部を持ち、厚さ800マイル(約1287㎞)の殻と内部に直径600マイル(約965㎞)の太陽を配置したものだった。
彼はシムズ説を採用した仮説で模型を造り、特許を取得した。
リチャード・S・シェイヴァー
1940年代、奇人リチャード・S・シェイヴァーは、空洞説をもとにした地底に住むデロ族とテロ族という種族についての実話なのか妄想なのかよくわからない奇妙な小説『レムリアの記憶』を発表した。
シェイバーによると、地球の空洞には人間らしさを保ったテロ族と邪悪でサディスティックなデロ族という種族が暮らしている。
彼らは、1万2000年前に太陽の異常現象を避けるために宇宙へ脱出した古代種族の末裔で地球に住み着いた最初の宇宙人なのだ。
地球脱出の際、デロ族とテロ族は逃げ遅れて取り残されてしまったため、太陽からの有害な放射線を避けるために地底での生活を余儀なくされた。
その後、邪悪とされるデロ族は高度な技術を駆使し、地上の住人の心を操り、地底世界の存在を隠蔽するための陰謀に加担している。また、食用や娯楽で拷問を楽しむために地上の住民を誘拐している。
レイモンド・バーナード
ニューヨーク大学のレイモンド・バーナード博士は、1969年にリチャード・バード少将のエピソードをまとめた『空洞地球 史上最大の地理学的発見』を出版した人物で、地球の空洞部分に住む宇宙人についても持論を展開している。
バーナード博士によれば、地球の内部には身長が3.6メートルもあるテラス族という種族が住んでいて、彼らの祖先はアトランティス人だという。彼らは生野菜を主食とし、内と外の移動手段としてUFOを使っているという。
バーナード博士は、1941年に視察に訪れたエクアドルのジャングルでアンデスの隠者聖人と出会い、1950年代にブラジルへ移住すると土地を購入し、同じ楽園思想の考えを持つ者たちと念願だったコミュニティーを創設した。博士はブラジルのどこかに地底への入り口があると信じていた。
ガードナーは地球空洞説で特許を取得
1914年5月12日、アメリカの作家マーシャル・B・ガードナーは地球空洞説の特許を取得した。
地球空洞説の特許番号は「1096102号」。いわゆる陰謀論とされるモノの中で正式な特許を取得したのは、これが初めての事にちがいない。
だが、1914年には、その言葉を広めたとされるCIAも存在しておらず、のちにこの説に陰謀論という名のラベルが貼られることになるとは当のガードナーも想像しなかっただろう。