「不死身や不老不死、死なない生物っているの?」という話題が出た時、必ずといってその名が挙がる生物、それが「クマムシ」です。
どんな環境でも生きられる、殺しても死なないのではないかという噂だけが独り歩きしている感もありますが、今回は最強の生物の素顔を覗いてみました。
クマムシ最強か
クマムシが最強生物と言われるのは、自然界ではありえない耐久性で耐えまくるので、何か萎えますよね。
耐久性は次のようになっています。
- 乾燥・・・体の85%を占める水分を3%まで減らして水のない場所でも耐える
- 温度・・・150℃の高温から、ほぼ-273℃の極低音まで耐える
- 圧力・・・真空〜7万5000気圧まで耐える
- 放射線・・・高線量の紫外線、X線、ガンマ線などの放射線にも耐える
- 電子レンジでチンしても耐える
- 業務用冷蔵庫で凍らせても耐える
寿命
ほぼ不死身とも言える耐性を持つクマムシですが、通常モードで活動した場合の寿命は半年です。
しかし、クマムシは乾眠の状態で長期間生存できることが分かっています。
例えば、正式な学術論文ではありませんが、博物館の苔の標本の中にいた乾眠状態のクマムシが120年後に水を与えられ蘇生したという記録も残っているようです。
大きさ
クマムシの体長は50マイクロメートル〜1.7ミリメートルで、節足動物と同じく体節を持つ小さな動物です。
肉眼
クマムシは肉眼では確認しにくい微小な動物です。
顕微鏡を使えば観察できます。
英語
ずんぐりむっくりとした姿が、熊に似ていることからクマムシと呼ばれ、英語では「Water bear」と表記されます。
また、その耐久性から「長命虫」と呼ばれたこともありました。
虫ではない
クマムシは名前に「ムシ」とついていますが、虫ではなく昆虫とミミズの中間に位置する緩歩動物という種に属しています。
緩歩とはゆっくり歩くという意味です。
クマムシは4対8本の足でゆっくり歩くことから緩歩動物と呼ばれます。
生息地
- 熱帯から寒冷地
- 北極南極
- 深海
- 高山
- 温泉の中
など、海から陸のありとあらゆる場所に生息していると言われます。
生態
クマムシは現在分かっているだけでも1000種類以上存在しています。
陸上にいるクマムシの多くは、水分を含む苔(コケ)の隙間に住んでいます。
水棲のクマムシは、水草や藻類の表面で生活していますが、自由に水中を泳げるわけではありません。
クマムシは死なないのか?
クマムシは死なないのか?
クマムシを不死身に近づける能力としてクリプトビオシスがあります。
これは、「隠された生命活動」という意味で、クマムシはこのクリプトビオシスの一種である「乾眠」状態になることで、過酷な環境に対抗します。
また、乾眠状態のクマムシには水を与えると蘇生します。
クマムシは、周囲の環境が乾燥してくると、体を縮め「樽」と呼ばれる状態にトランスフォームします。
これは、ほぼほぼ代謝を止めて乾眠にはいる状態です。
冬眠コールドスリープや意図的に仮死状態になっていると考えるとイメージしやすいかもしれません。
宇宙空間から生還
2007年、クマムシの耐性を調べるため、ロシアが科学衛星を使って、宇宙空間に10日間晒すという実験を行いました。
太陽光を遮ったクマムシは、宇宙線や真空に晒されても蘇生し、生殖能力も失われていないことが確認されました。
しかし、太陽光を直接受けたクマムシは、一部は蘇生したものの、生存率は低かったそうです。
クマムシの弱点と殺し方
じつは、通常モードのクマムシは弱弱で、簡単に死にます。
潰せば潰れる、火に当たれば燃えます。
無敵モードが発動するのは、クリプトビオシス(乾眠)という仮死状態になった時だけです。
しかも、無敵モードの乾眠を上手く発動できるかどうかも「陸生のクマムシ」と「水棲のクマムシ」といった種類によって違いがあります。
陸生クマムシ
陸生のクマムシは急激な乾燥状態への耐性が強く、約30分程度で乾眠状態に入ることができます。
水棲クマムシ
一方、水の中に棲むクマムシは、急激な乾燥状態に弱く、24時間~48時間のゆっくりペースで乾眠状態に入らなければ死んでしまいます。
まとめ
乾燥状態で眠りにつくという「クリプトビオシス」は、いっけん最強に見えますが諸刃の剣です。
いつでもすぐに、無敵モードになれるわけではなく、ゆっくりと時間を掛けて上手く仮死状態になれた時に限定されるので、最強なのかどうか良く分からなくなります。
クマムシが不死身かどうかは時(乾燥時間)と場合(種類)によるということですね。
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