不思議な話

最強生物クマムシが不死身かどうかは時と場合による。

「不死身や不老不死、死なない生物っているの?」という話題が出た時、必ずといってその名が挙がる生物、それが「クマムシ」だ。

どんな環境でも生きられる、殺しても死なないのではないかという噂だけが独り歩きしている感もあるが、今回は最強の生物の素顔を覗いてみよう。

クマムシ最強か

Waterbearクマムシ image:wikipedia

クマムシが最強生物と言われるのは、自然界ではありえない耐久性で耐えまくる。

耐久性は次のようになっている。

  • 乾燥・・・体の85%を占める水分を3%まで減らして水のない場所でも耐える
  • 温度・・・150℃の高温から、ほぼ-273℃の極低音まで耐える
  • 圧力・・・真空〜7万5000気圧まで耐える
  • 放射線・・・高線量の紫外線、X線、ガンマ線などの放射線にも耐える
  • 電子レンジでチンしても耐える
  • 業務用冷蔵庫で凍らせても耐える

寿命

ほぼ不死身とも言える耐性を持つクマムシだが、通常モードで活動した場合の寿命は半年である。

しかし、クマムシは乾眠の状態で長期間生存できることが分かっている。

正式な学術論文ではないが興味深い話がある。

博物館の苔の標本の中にいた乾眠状態のクマムシが120年後に水を与えられ、蘇生したという記録も残っているようだ。

大きさ

クマムシの体長は50マイクロメートル〜1.7ミリメートルで、節足動物と同じく体節を持つ小さな動物である。

肉眼

クマムシは肉眼では確認しにくい微小な動物だが、顕微鏡を使えばラクに観察できる。

英語

ずんぐりむっくりとした姿が、熊に似ていることからクマムシと呼ばれ、英語では「Water bear」と表記される。

その耐久性から「長命虫」と呼ばれたこともあった。

虫ではない

クマムシは名前に「ムシ」とついているが、虫ではなく昆虫とミミズの中間に位置する緩歩動物という種に属している。

緩歩とはゆっくり歩くという意味だ。

クマムシは4対8本の足でゆっくり歩くことから緩歩動物と呼ばれている。

生息地

  • 熱帯から寒冷地
  • 北極南極
  • 深海
  • 高山
  • 温泉の中

クマムシは、海から陸のありとあらゆる場所に生息していると言われている。

生態

クマムシは現在分かっているだけでも1000種類以上存在している。

陸上にいるクマムシの多くは、水分を含む苔(コケ)の隙間に住んでいる。

水棲のクマムシは、水草や藻類の表面で生活しているが、自由に水中を泳げるわけではない。

クマムシは死なないのか?

クマムシは死なないのか?

クマムシを不死身に近づける能力としてクリプトビオシスがある。

これは、「隠された生命活動」という意味でクマムシはこのクリプトビオシスの一種である「乾眠」状態になることで、過酷な環境に対抗する。

乾眠状態のクマムシには水を与えると蘇生する。

クマムシは、周囲の環境が乾燥してくると、体を縮め「樽」と呼ばれる状態にトランスフォームする。

樽は、ほぼ代謝を止めて乾眠にはいる状態である。

冬眠(コールドスリープ)や意図的に仮死状態になっていると考えるとイメージしやすいかもしれない。

宇宙空間から生還

2007年、クマムシの耐性を調べるため、ロシアが科学衛星を使って宇宙空間に10日間晒すという実験をおこなった。

太陽光を遮ったクマムシは宇宙線や真空に晒されても蘇生し、生殖能力も失われていないことが確認された。

しかし、太陽光を直接受けたクマムシは一部は蘇生したものの生存率は低かったという。

クマムシの弱点と殺し方

じつは、通常モードのクマムシは弱く簡単に死ぬ。

潰せば潰れる、火に当たれば燃える。

無敵モードが発動するのは、クリプトビオシス(乾眠)という仮死状態になった時だけだ。

しかも、無敵モードの乾眠を上手く発動できるかどうかも「陸生のクマムシ」と「水棲のクマムシ」といった種類によって違いがあるのだ。

陸生クマムシ

陸生のクマムシは急激な乾燥状態への耐性が強く、約30分程度で乾眠状態に入ることができる。

水棲クマムシ

水の中に棲むクマムシは、急激な乾燥状態に弱く、24時間~48時間のゆっくりペースで乾眠状態に入らなければ死んでしまう。

あとがき

乾燥状態で眠りにつくという「クリプトビオシス」は、いっけん最強に見えるが諸刃の剣だ。

いつでもすぐに、無敵モードになれるわけではなく、ゆっくりと時間を掛けて上手く仮死状態になれた時に限定されるので、最強なのかどうか良く分からなくなる。

クマムシが不死身かどうかは時(乾燥時間)と場合(種類)によるということなのだ。

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