アメリカ大統領の歴史には、いわくつきの都市伝説が存在する。
それは、西暦が「20の倍数」の年に選出された者は呪いにより、在職中に暗殺されたり、急死するというものである。
今回は、アメリカ大統領の暗殺にまつわる都市伝説「テカムセの呪い」について見ていこう。
テカムセの呪いとは?
「テカムセの呪い」は、アメリカ先住民(インディアン)ショーニー族のテカムセ酋長が、のちにアメリカ合衆国大統領になるウィリアム・ハリソンに殺されたことに端を発するものだ。
テカムセは、インディアン諸部族を1つにまとめ上げたリーダーとして、領土侵略を企てる白人入植者たちと戦ったが、1811年の「ティピカヌーの戦い」に敗れ、多大なる領土を失った。
呪いの別称
このテカムセの呪いには、下記のような別称(呼び名)も存在する。
- 0年の呪い(zero-year curse)
- 20年の呪い(twenty-year curse)
- ティピカヌーの呪い(curse of Tippecanoe)
- 大統領の呪い(presidential curse)
呪いの主は誰?
この呪いを作り出した「呪い主」は、テカムセ酋長本人をはじめ、その弟で予言者だったテンスクワタワや息子を殺されて恨んでいた母など諸説語られているが、どれも確たる証拠はない。
- テカムセ酋長
- テカムセの弟・テンスクワタワ
- テカムセの母
テカムセに呪われた大統領たち
テカムセの呪いの犠牲者となった大統領は以下の7名とされる。
呪いは1840年から1960年の120年間で、西暦が20の倍数の年に発動している。
また、一説には連邦準備制度(中央銀行制度)に反対したアメリカ大統領が暗殺の標的になるという噂もあったりする。
当選年 | 大統領 | 死因 |
---|---|---|
1840年 | 第9代ウィリアム・ハリソン | 肺炎で死去 |
1860年 | 第16代エイブラハム・リンカーン | 暗殺 |
1880年 | 第20代ジェームズ・ガーフィールド | 暗殺 |
1900年 | 第25代ウィリアム・マッキンリー | 暗殺 |
1920年 | 第29代ウォレン・ハーディング | 心臓発作で死去 |
1940年 | 第32代フランクリン・ルーズベルト | 脳溢血で死去 |
1960年 | 第35代ジョン・F・ケネディ | 暗殺 |
暗殺を免れた大統領
当選した西暦が20の倍数年でありながらも、運良く暗殺を免れた大統領もいる。
1980年 | 第40代ロナルド・レーガン | 銃撃されるが暗殺未遂 |
2000年 | 第43代ジョージ・W・ブッシュ | 手榴弾で暗殺未遂 |
第40代レーガン大統領は、1981年にワシントンD.C.で銃撃されるが一命を取り留め暗殺未遂に終わり任期をまっとうし、2004年に亡くなった。
また、第43代ブッシュ大統領は任期中に数回におよぶ暗殺計画を回避し続けた。
- 2001年・・・ドイツの菓子パン・プレッツェルを食べて失神し倒れ込み、顔に傷を作ったものの窒息死を免れた
- 2005年・・・グルジアで演説中に手榴弾を投げつけられたが、幸いにも不発により暗殺未遂、さらにイラク人記者に靴を投げつけられるも、鬼回避でフィニッシュ(任期満了)を迎えた
キリスト教団体の祈りが呪いを打ち破った?
このように、レーガン氏やブッシュ氏の例もあり、20年周期で選ばれる大統領のすべてが、在職中に暗殺やなんらかの死を迎えるわけではないというのも事実だ。
そして、「テムカセの呪い」は偶然やこじつけであり、大統領の怪死の原因ではないという考え方が広まっていった。
しかし、複数のキリスト教団体は大統領に取り憑く「呪い」を真剣に捉えており、1980年にはレーガン氏、2000年にはブッシュ氏に対して「現役大統領が災難から守られるよう祈願」していた。
ある宗教団体は、この大統領に対する祈願が邪悪な呪いを打ち破ったのだと信じている。
あとがき
ちょうど20の倍数年である2020年のアメリカ大統領選挙は、トランプ氏を破りジョー・バイデン氏が当選した。
1960年を最後に現役大統領を襲う「テカムセの呪い」は発動していない。とはいえ、20の倍数年に当選した大統領に油断は禁物だ。
バイデン氏にいたっては、当選が確実となった11月28日、フライングで呪いが発動してしまい、愛犬と遊んでいる最中に足を骨折している。
テカムセの無念は、今もなおアメリカの大統領になる者を呪い続けている。