陰謀論。
それは、ある出来事や状況を指し示す言葉。
例えば、権力や財力を持つ邪悪な集団や人物による陰謀や謀略が関与しているとするもの。
また、偏見や証拠が不十分な噂を否定的な意味合いをもって呼ぶもの。
今回は、これまで陰謀論とされていたが、のちに事実(陰謀)だと判明した事件や事象について見て行こう。
①南満州鉄道爆破事件
南満州鉄道爆破事件は、1931年に現在の中国東北部の柳条湖付近で発生した爆破事件。
事件の起きた場所から柳条湖事件(りゅうじょうこじけん)とも呼ばれ、のちの満州事変の発端となった。
満州近郊の柳条湖付近で、関東軍(大日本帝国陸軍)が南満州鉄道の線路を爆破し、これを中国軍の犯行として発表することで、満州での軍事活動と占領の口実として利用した偽旗事件(自作自演)。
②トンキン湾事件
トンキン湾事件は、1964年ベトナム戦争において、アメリカの駆逐艦がベトナム軍に攻撃を受けたとされる事件。
北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされており、この事件をきっかけにしてアメリカ政府はベトナム戦争に介入しはじめた。
しかし、1971年「ペンタゴンペーパーズ」を手に入れたニューヨーク・タイムズは、事件の一部はアメリカが仕組んだ偽旗事件(自作自演)であると暴露した。
ペンタゴンペーパーズとは、ベトナム戦争とトンキン湾事件に関する非公開の政府報告書である。
③坂本弁護士一家殺害事件
坂本弁護士一家殺害事件とは、1989年11月4日、オウム真理教の幹部6名が「オウム問題」に取り組んでいた弁護士・坂本堤氏(当時33歳)とその家族を殺害した事件である。
殺害現場から信者の落した「オウム真理教のバッジ」が発見されたため、当初からオウム犯行説が疑われていた。
しかし、教団が捜査から逃げ続けていたことや、坂本弁護士が某事件で警察と対立し、警察の嫌いな共産主義者と思われていたフシもあり、長らく捜査が進展することはなかった。
1995年に実行犯の1人が自供したことで、事件の真相が明らかになった。
④松本サリン事件
松本サリン事件は、1994年6月27日に長野県松本市で起きたオウム真理教信者によるテロ事件である。
この事件では、神経ガスのサリンがバラ撒かれ、最終的には8人の死者を出した。
事件の第一通報者である河野義行氏には、重要参考人として家宅捜索や連日取り調べが行われ、被疑者不詳であるにもかかわらず、マスコミはあたかも河野氏が容疑者のように報道した。
しかし、この事件は警察のお粗末な捜査と一方的な取り調べ、メディアの偏見報道などにより、無実の人間が犯人として扱われてしまった「冤罪未遂事件」でもある。
その後、一連の犯行がオウム真理教の犯行であるとこを示唆する「松本サリン事件に関する一考察」という怪文書がメディアや警察関係者に対して出回った。
そして、別事件で教団に対しての強制捜査が実施されたのを皮切りに、幹部たちは続々と逮捕されていき、松本サリン事件を含む一連の事件がオウム真理教の犯行であることを自供した。
2017年7月6日、オウム真理教元代表麻原と関係者らの死刑が執行された。
しかし、その話題の陰で「水道法民営化法案」という「命の水」に関するやり取りがシレっと国会を通過していたのだ。
要するに、オウム信者の死刑執行が「水道民営化」の隠れ蓑に使われたということだ。
マスコミが何かの事件や芸能スキャンダルなどで大騒ぎする時、その裏で何が起きているのかについても警戒する必要がある。
⑤日本人拉致問題
1970年代に日本海沿岸で日本人が行方不明になる謎の事件が多発し、「北朝鮮に拉致されているのでは」という噂が囁かれていた。
しかし、1988年の大韓航空機爆破事件のあとに、日本政府が拉致問題の存在を公式に認めるまでのあいだ、陰謀論だとしてまともに扱われることは無かった。
2002年、平壌(ピョンヤン)で行われた小泉首相との日朝首脳会談において、北朝鮮政府は正式に拉致を行ったことを認めた。
⑥ロッジP2事件
ロッジP2事件とは、イタリアに拠点を置くフリーメイソンのグランドロッジ傘下で活動していたロッジP2によるイタリア政府転覆計画である。
ロッジP2はリーチオ・ジェッリ代表を中心として、1981年3月に起きた「ボローニャ中央駅爆弾テロ事件」をはじめとする極右テロや経済犯罪、政府転覆計画などを画策していた。
この陰謀はイタリア・アンブロシアーノ銀行頭取のロベルト・カルヴィ氏の不審死により明るみに出た。
これまでフリーメイソンによる陰謀は表に出る事はなかったが、事実が表に出てきた珍しい事件である。
⑦エシュロン
エシュロンとは、軍事や安全保障の名の下に世界中の電話やファックス、電子メールなどを盗聴する通信傍受システムであり、これまで陰謀論やフィクションとして語られてきた。
国家安全保障局(NSA)が運用するこのシステムは、冷戦下のソ連に対抗するために作られたという。
欧州連合(EU)は、エシュロンがNSA主体で運用されていることを指摘し、2013年には元NSAおよびCIAエージェントだった「エドワード・スノーデン」が国際監視網(PRISM)の存在を暴露したが、アメリカはその存在を認めたことはない。
⑧CIA麻薬ビジネス関与説
CIA麻薬ビジネス関与説は、1950年代アメリカ中央情報局(CIA)が中華民国と組んで中国共産党を倒すため、「黄金の三角地帯」で麻薬を製造し、反共産組織へ資金提供していたという陰謀である。
この秘密工作はレーガン政権まで行われていたという。
⑨アメリカ路面電車スキャンダル
アメリカ路面電車スキャンダルとは、20世紀中頃、ナショナルシティラインズ社(NCL)がアメリカ合衆国内すべての路面電車網を買収後に廃止し、バスに置き換えたとする陰謀である。
これには、アメリカの一般大衆に車を買わせようとする意図もあったとされる。
NCLに出資していた米自動車メーカーのゼネラルモータース(GM)が、路面電車の廃止後、他社の物ではなく、自社のバスを買わせようとした計画が独禁法に抵触したため、有罪になり罰金が科せられたのは紛れもない事実である。
⑩ロジャー・スクルートン問題
ロジャー・スクールトン問題は、世界保健機関(WHO)がおこなった「禁煙キャンペーン」を批判する記事を書く見返りとして、日本たばこ産業(JT)が英国のジャーナリストであるスクールトンに月間4,500ポンドの謝礼を支払っていたという事件である。
この陰謀は2002年にイギリス大手新聞社ガーディアン紙に暴露され、スクールトンの記事の連載は中止され契約も打ち切られた。
⑪禁煙条例に対する組織投票問題
これもまた、日本たばこ産業(JT)による陰謀である。
神奈川県は、2006年から2007年にかけて「条例で公共の場所の喫煙を規制すること」というアンケートを実施した。
このアンケートに対し、日本たばこ産業(JT)は自社の社員を使い、反対の投票をさせていたことが判明した。
日本たばこ産業は「条例が成立すれば他の自治体にも波及する恐れがあった」としている。
⑫在日米軍に関する密約問題
在日米軍に関する密約問題とは、日本政府と在日米軍との間には、かねてより密約が存在するという陰謀論。
密約には次のようなものがあるとされる。
- 非核三原則の適用除外
- 日本では在日米軍将兵の罪を裁くことが出来ない
- 沖縄返還に関して日米政府間の密約が存在する
「在日米軍裁判権放棄事件」は、日本が在日米軍の裁判権について「重要な案件」以外は放棄しているということが、アメリカで機密規制解除された公文書の公開で明らかになった事件である。
また、毎日新聞の記者と外務省事務次官が、1971年の「沖縄返還協定」に関する機密情報を国会議員に漏洩し、国家公務員法違反で有罪になった「外務省機密漏洩事件」も話題になった。
⑬医学部不正入試問題
医学部不正入試問題は、「女子の点数が男子よりも低く見積もられる」、または「女子を入学させない」といった大学医学部で性差別が行われていた問題である。
私立大学は国公立大学に比べ、入学基準を独自に定めることが一定の裁量で可能という話もある。
2018年、東京医大は「不正入試」が行われていた事実を認めた。
まとめ
陰謀論。
木を隠すなら森の中。
多くの嘘の中に少しの真実が混ぜられている。
陰謀論が事実と判明したとき、「論」ではなく、それは純粋な陰謀となる。
そして、真実を事実を陰謀論と呼び広め、闇に葬りたい連中が少なからず存在している。
「陰謀論」という言葉は、謀(はかりごと)を持つ者が自分を守るために創り出した盾なのだ。