ボードゲームと言えば将棋やチェスが有名である。しかし、その将棋やチェスにも起源となったゲームがあることを御存だろうか?
そのゲームは古代インドで生まれ、「チャトランガ」と呼ばれている。あのアレキサンダー大王もこのチャトランガを知っていたという伝説もあるのだ。
この記事では、将棋やチェスの起源とも言われている古代インド発祥のボードゲーム「チャトランガ」をご紹介する。
チャトランガとは古代インド発祥のボードゲーム
チャトランガは古代インドで生まれたボードゲームの一種である。
現在、世界中で最もポピュラーなボードゲームである「将棋」や「チェス」の起源と考えられている。
チャトランガという言葉の意味
チャトランガ(catur-an^ga)という言葉は、古代インドの言語だったサンスクリット語で、次のような意味がある。
- chatur(チャトラ):4
- an^ga(ンガ):部分
つまり、チャトランガ(catur-an^ga)は、「像・馬・車・歩兵」の4つの戦力を意味していると考えられている。
また、将棋やチェスだけでなくアラブ圏に伝わるシャトランジの起源とも言われている。
チャトランガはナゼ生まれたのか?
チャトランガの起源に関しては、戦争が好きな王に戦争をやめさせるために、高僧(位の高い僧侶)が戦いを模倣したゲームを作って献上したのが始まりとする説がある。
つまり、王様の戦争好きを危惧していたお坊さんが、王様に戦争をやめさせるために「戦争シミュレーションゲーム」を作ったというのが、チャトランガが生まれた理由である。
アレキサンダー大王もチャトランガを知っていた?
「あのアレキサンダー大王もチャトランガを知っていたのでは?」という話も残っている。
これまでは、紀元前327年頃にインドへ東征したアレキサンダー大王がチャトランガを見たのではと考えられていた。
しかし、のちに以下のような理由から、この説は否定されているようである。
- アレキサンダー大王が見たのは別のボードゲームだったが、それをチャトランガと勘違いした
- 当時のインドの戦術がチャトランガの戦い方に似ていたこととアレキサンダー大王を結び付けてしまった
チャトランガのルールとやり方
チャトランガは将棋やチェスの起源と言われるだけあって、駒の種類や動き方もよく似ている。
チャトランガの駒の種類
- 王(ラージャ)・・・4・2人制
- 像(ハスティーまたはガジャ)・・・4・2人制
- 馬(アシュワ)・・・4・2人制
- 車(ラタ)または船(ローカ)・・・4・2人制
- 歩兵(パダーティ)・・・4・2人制
※将(マントリ):2人制のみに追加される駒
駒の種類は上記の5種類で、駒はそれぞれの動きが決まっている。
2人制のチャトランガには将(マントリ)が追加され、6種類の駒を使用する。
チャトランガの駒の動き方
チャトランガの駒の動き方には、いくつかの説がある。以下にあげる駒の動き方はその中の1つである。
駒の動き方のルールは必ずしも1つではなく、これまでの歴史の中で何度も改良されている。
駒の動き方のルールがいくつもある理由は、文献がさまざまな時代で書かれているからだと考えられている。
王の動き方
〇 | 〇 | 〇 | ||
〇 | 王 | 〇 | ||
〇 | 〇 | 〇 | ||
王は将棋の王将やチェスのキングと同じ、全方向に1マスずつ動ける。
将の動き方
〇 | 〇 | |||
将 | ||||
〇 | 〇 | |||
将は、斜めに1マスずつ動ける。
象の動き方
〇 | 〇 | 〇 | ||
象 | ||||
〇 | 〇 | |||
象の動き方には主に2つの説がある。
上記は、「斜め4方向」と「前に1マス動ける」とする説だ。
将棋の銀将の動き方と同じだ。
〇 | 〇 | |||
像 | ||||
〇 | 〇 |
2つ目は、斜めに2マスずつ動けたとする説。
この説では、自軍の駒と相手の駒を飛び越えられる。
馬の動き方
〇 | 〇 | |||
〇 | 〇 | |||
馬 | ||||
〇 | 〇 | |||
〇 | 〇 |
馬は、自軍や相手の駒を飛び越えて、前後左右に2マス行って横に1マス動ける。
将棋の桂馬を8方向に動かせるイメージだ。
船の動き方
| | ||||
| | ||||
ー | ー | 船 | ー | ー |
| | ||||
| |
船は、前後左右に何マスでも進める。
将棋の飛車と同じ動き方だ。
歩兵の動き方
〇 | ||||
兵 | ||||
歩兵も将棋の歩と同じ動きで、前に1マスだけ動ける。
チャトランガには4人制と2人制がある
チャトランガには2人制と4人制のものがある。
もともと4人制が先に生まれ、そのあと2人制が作られたという説があった。
しかし、近年では調査が進み、逆に2人制のチャトランガが先に作られたとする説が有力になっている。
4人制チャトランガのルール
インドは植民地支配を受けていた時期もあり、チャトランガが生まれた当初のオリジナルルールは消失している。
現存するルールは以下のとおりだ。
- 縦横8✖8マスに区切られた盤上で行う
- 4人二組で勝負し、その後は勝った組同士で優勝決定戦をする
- 一人ずつ順番にサイコロを振って、出た目に従って任意の駒を動かす
- 歩兵が最前列に到達した場合は、その歩兵がいた列のその他の上位の駒に昇格する
- 王はゲームの中で1度だけ、馬の動きができる
- 自分の駒を動かす時に、動く先に他のプレイヤーの駒がある場合はその駒を取ることができる
- 相手の駒を取っても将棋のように持ち駒として使用することはできず取り捨てになる
- 他のプレイヤーに自分の王が取られたら負けになる
4人制チャトランガの駒の初期配置
車→ | 兵→ | 王↓ | 像↓ | 馬↓ | 車↓ | ||
馬→ | 兵→ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | ||
像→ | 兵→ | ||||||
王→ | 兵→ | ||||||
←兵 | ←王 | ||||||
←兵 | ←像 | ||||||
兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | ←兵 | ←馬 | ||
車↑ | 馬↑ | 像↑ | 王↑ | ←兵 | ←車 |
これが4人制チャトランガのスタート時の駒の配置である。
将棋やチェスのようなゲームを「麻雀のように4人対戦でやる」というイメージが浮かばないので、戸惑ってしまいそうだ。
あと、スタート時から側面から狙われるという理不尽さや、「王」の守りが手薄すぎて怖いといった不思議空間に叩き込まれる。
2人制チャトランガのルール
- 2人制チャトランガのルールは4人制とほぼ一緒
- 2人制ではサイコロは使わずに駒を動かせる
- 駒の種類は4人制のものに将(マントリ)を加えた6種類
上記が2人制のルールだ。
2人制チャトランガは4人制のルールとほぼ同じ。
二人制チャトランガの駒の初期配置
車↓ | 馬↓ | 像↓ | 将↓ | 王↓ | 像↓ | 馬↓ | 車↓ |
兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ | 兵↓ |
兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | 兵↑ | 兵↑ |
車↑ | 馬↑ | 像↑ | 王↑ | 将↑ | 像↑ | 馬↑ | 車↑ |
2人制の駒の初期配置は、私たちにも見覚えのあるモノだ。
チャトランガの紹介動画
上記はYouTubeにあるチャトランガの紹介動画。
チャトランガはAmazonで売ってる?
以前はアマゾンでも見られたが、現在は取り扱いがないようである。
将棋やチェスで遊ぶことが出来る現代でどれほどチャトランガの需要があるのかも疑問ではある。
あとがき
将棋やチェスの起源とされている古代インドのボードゲーム「チャトランガ」。
このゲームが作られた理由が、「王様に戦争させないためだった」というのは驚きだ。
ここ最近世界では物騒な空気が充満してきてるが、世界各国は戦争の代わりにゲームでもして平和的に解決したらええと思う今日この頃である。