世界五大宗教のうち、ユダヤ教とキリスト教、イスラム教は、ともに「旧約聖書」の世界観が元になっている。
その中でもイスラム教は、7世紀にムハンマド(マホメット)が創始した宗教として知られ、彼もユダヤ教のモーセやキリスト教のキリスト同様に、神の言葉を授かった預言者の1人である。
彼に神の言葉を伝えたのは天使だった。
天使と悪魔と言えば、ユダヤ教とキリスト教を舞台に語られることが多いが、実はイスラム教にも存在していたりする。
しかし、イスラム教では偶像崇拝を固く禁じているため、天使の絵や像もほとんど存在せず、他の宗教に比べ、あまり馴染みのないものになっている。
今回は、イスラム教の天使と悪魔、地獄の門について見ていこう。
イスラム教の天界
イスラム教の始祖ムハンマドが天使に見せられた天界の姿は上記のように7階層で構成されており、最上階の第7天には、シドラの木(生命の木)や天使が集まるという神殿「ジャンナ」があるという。
天界は終末の日に崩れ落ち、永遠の天国ジャンナが出現するとされている。
イスラム教の四大天使
イスラム教の成立にも関わった天使たちのイメージは、キリスト教の天使とは異質である。
イスラム教には、次の四大天使が存在する。
- ジブリ―ル
- イズライール
- イスラーフィール
- ミーカーイール
この四大天使はアラビア語でケルビム(智天使)と呼ばれる。
イスラム教の伝承では、最初の人間アダムは、この四大天使が四方の大地より集めた土から生み出されたとされている。
①ジブリ―ル
ジブリ―ルは、キリスト教では「ガブリエル」と呼ばれ、ムハンマドに「コーラン」の内容を伝えた天使である。
コーランでは、ムハンマドのものを訪れたジブリ―ルが、天馬ブラークにムハンマドを乗せて、メッカからイスラエル神殿に運び、神の言葉を伝える場面が登場する。
また、ジブリ―ルの容姿は、600枚以上の緑色の翼を持ち、両目のあいだには太陽があり、髪の毛の1本1本には月と星の輝きがあると伝えられている。
②イズラーイール
イズラーイールは、死者の魂を神のもとへ運ぶ「死の天使」であり、ユダヤ教ではアズラエル、キリスト教ではラファエルと呼ばれている。
イズラーイールの姿は、4万枚の翼と7万本の足を持ち、目と舌は人間の数と同じ数だけあると言われている。
③イスラーフィール
イスラーフィールは、復活と音楽の天使で、その名前には、「神の火」や「燃えているもの」といった意味がある。
イスラム教にも、他の宗教と同様に「最後の審判」が存在する。
その時が来ると、イスラーフィールは角笛のラッパを吹き鳴らして死者を蘇らせるという。
その姿は、4枚の翼で、東と西、天地を覆い、最後の1枚はベールとなって神とイスラーフィールを分け隔てており、足はしっかりと大地を掴み、頭は神の玉座の支柱に触れているという。
④ミーカーイール
ミーカーイールは、キリスト教では「大天使ミカエル」に相当する知恵と知識を司る天使。
彼は、7階層の天上世界で第7天にいるという。
その姿は、それぞれ百万の顔と目と舌を持ち、異なる言語を話し、翼は緑色で黄色い毛を持つとされる。
イスラム教の四大天使の姿は、ユダヤ教やキリスト教とは違い、非人間的に描かれているのが特徴である。
そこには、偶像崇拝を禁止するという教えが影響しているのかもしれない。
イスラム教の悪魔
コーランでも認められた煙の精霊ジンは、アラブ世界での人ならざる存在である。
イスラム教では、神は天使とジンと人間を創ったと言われる。
ジンは悪魔というよりも精霊や魔人、妖怪の類いだと言われ、善いジンもいれば、悪いジンもいるという。
悪いジンには、人の命を奪う凶暴なものから、イタズラ好きという小悪魔までさまざまだ。
イスラム教の精霊ジンには、以下のように一番強力なマーリドから順に格付けされている。
- マーリド
- イフリート
- シャイターン
- ジン
- ジャーン
イフリート
イフリートは、イスラム教における堕天使とも言われ、煙の立たない純粋な炎で作られた精霊(魔人・悪魔)である。
ときに、人助けをすることもある。
シャイターン
シャイターンは、イスラム教におけるサタン(悪魔)の階級で、中でもイブリースはそのリーダー格である。
イスラム教の教典コーランによれば、アッラー(神)は、土でアダムを作り天使たちにひれ伏すよう命じたが、イブリースは人間の下につくなど真っ平ゴメンだと反抗し神を怒らせた。
イブリースは、天界から追放されるが、最後の審判の日まで猶予をもらった。
そして、人間を誘惑し神への信仰を失ったものを「地獄のジャハンナム」に引きずり込むことを認めさせたという。
ジン
ジンはアラビアンナイトにも登場し、「ランプの精」として有名だ。
漫画「マギ」を御存じの方にはお馴染みだろう。
地獄の門番をする天使たち
イスラム教の地獄は、「ジャハンナム」と呼ばれる。
通常、天国は天使の領分、地獄は鬼や悪魔のテリトリーと思われている。
しかし、イスラム教の地獄を管理しているのは天使たちなのだ。
教典「コーラン」では、地獄の業火の上には番人として19人の天使がいると記されている。
地獄の天使たちの仕事は、背信者に試練を与えることだという。
天使マリク
地獄の総大将的ポジションにいるのが、天使マリクだと言われている。
マリクは、コーランに名前が出てくる数少ない天使でもある。
地獄の亡者が業火に焼かれ苦しみながらマリクに助けを求めるが、彼は非常に徹して耳を貸すことはない。
記録天使ハファザ
マリクはハファザから亡者どもが何を考えているのかを聞いているので、決して優しい顔を見せることは無い。
記録天使ハファザは、2人1組で行動する天使とも言われ、スパイ活動に長けた天使である。
地獄に落された人間のそばで気配を悟られることなく、会話や行動を逐一記録していて、それを天使マリクに報告する役目を負っているのだ。
天使ルマンとムンカルとナキール
天使ルマンは埋葬された死者の魂を選定する役目を負っている。
そして、二人組の天使ムンカルとナキールがやってきて死者を糾弾する。
この時、ウソを付くとハンマーで頭をたたき割られるという。
このように、イスラム教の天使たちは、日夜地獄の管理者としての業務に勤しんでいるのである。
イスラム教の地獄「ジャハンナム」
イスラム教の地獄はジャハンナムと呼ばれていて、こちらも7階層で構成されている。
この地獄は灼熱の炎が燃え盛る深い穴であり、生前に罪深い行いをした者やイスラム教の教義を守らなかった者が落とされるという。
そこでは、炎で顔や体を焼かれたり、煮えたぎった湯を浴びせられるといった恐ろしいものばかりだ。
また、ジャハンナムの底には、ザックームという悪魔の頭のような実をつけた木が生えている。
そして、罪人たちは腹が破けるほど、その木の実を食べさせられるという。
とはいえ、死人がすぐにジャハンナムの地獄に送られるわけではない。
死んだ人間は、善人も悪人もみなバルザフという冥界にいったん収監され、「最後の審判の日」を待つことになる。
天使が2度ラッパを吹き鳴らし、いよいよその時が来ると、最後の判決が下り、天国に行く者とジャハンナムに落される者に分かれるのである。
まとめ
2021年5月21日、イスラエル政府とパレスチナ自治区を支配するイスラム組織ハマスが停戦を発効した。
4月中旬から数年ぶりにイスラエルとパレスチナの軍事衝突が再燃し、聖地エルサレムやパレスチナ自治区において、連日ロケット弾と空爆の応酬合戦が行われていた。
宗教や人種、領土などの問題は複雑で根深いのは分かるが、「やられたらやり返す」が延々と続くだけでキリが無いし、犠牲になり命を奪われた一般市民や女性、子供もいい迷惑だろう。
まあ、戦争や戦闘は自然発生しているのではなく、何かしらの「利」を求める第三者が宗教問題や人種問題を利用して意図的に起こしているという考え方もあるから余計ややこしい。
もし、戦争を止めたり、平和を司るような天使がいるなら、こういうのを上手いこと収めてくれたらありがたいのになと妄想している。
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