自民と維新の合流で「議員定数削減」の話題が取り沙汰されているが、この維新的な自分たち以外の他人の身を切る改革が本当に世の中のためになるのかどうかは、甚だ疑問だよね。

なんかまだこの記事を書いてる最中なんだけど、「議員定数削減は今国会の会期中には困難」みたいな報道も出ているみたい。

まあ、それは横に置いといて。これまで国会議員の議員定数が削減されてきた数は、こんな感じ。

  • 衆議院ではピーク時から47議席減少
  • 参議院ではピーク時から4議席減少
  • 合計51議席減少

これまで51議席減らしてきたけど、日本社会は良くなっているのかねえ。

衆議院議員定数の推移

  • 1986年:512名(ピーク時)
  • 1994年:500名
  • 2000年:480名
  • 2013年:475名
  • 2017年:465名(←1925年以降、過去100年で最少)

現在、日本の衆議院の定数は465人。議員一人あたりの有権者数は約27万人とされている。

米国の調査では、イギリスは議員一人あたり約10万人、ドイツは約11.6万人という比率になっている。

つまり、日本では議員一人が担当する有権者の数が多く、議員が少ない、ということになる。

外国と比べても日本の国会議員は少なすぎる

人口100万人あたりの国会議員の数で言えば、日本はOECD38か国中、下から数えて四番目で各国平均の半分以下。

ここから更に国会議員を削減すれば、連邦制のアメリカは覗いて、日本はOECD加盟国の中でもっとも国民の声が届かない政治になる。

OECDは先進国が加盟する経済協力に関する国際機関。

日本の国会議員と比べて米連邦議会議員の秘書の数はメチャメチャ多い

日本の国会議員、衆議院の公設秘書は最大3人で人数は固定。それ以外は「私設」で雇うことになるが、給与は議員個人や政党助成金から捻出する。

中小規模の議員であれば、秘書の数はだいたい5〜10人以下であることが多い。公設の3人だけで回している議員も珍しくない。

一方、アメリカの連邦議会議員(上院・下院)は、1議員ごとに人件費枠の予算与えられているので、その範囲内で何人でも雇っていいことになっている。

地元事務所を複数もっているので、「事務所数×人」になる。秘書を平均20〜40人くらい持っている議員はざらである。上院はもっと多いこともある。

秘書の構成

ちなみに、秘書(スタッフ)の構成は次のようになっている。

  • 政策アドバイザー
  • 法案立案補佐
  • 広報
  • Press
  • 地元対応(ケースワーク)

連邦議員は秘書の権限も強く、政策スタッフは普通に条文も書く。日本とアメリカで、こんなに秘書の数に差がついてしまう理由はいくつかある。

まず、アメリカの議員は巨大な選挙区・州を担当していて、ケースワーク(連邦行政の苦情処理)を大量に受ける。そのため、議員はほぼ小さな官庁を1つ持つようなレベルで組織化される。

それに対して日本の議員は制度的には「秘書は少数精鋭で、立法は官僚が下書きし、政治家が意思決定」という設計になっている。

日本の国会議員を減らしてもアメリカのようには出来ない

アメリカの議員は「人件費枠」が決まっていて、議員側の裁量で自分の秘書を大量に雇うことが出来る。たとえ議員の数が少なくても、多くの問題に取り組めるし、議員の不足を補うことができる。

日本はアメリカの3倍以上も国会議員がいるから議員定数を今の1/3まで減らすべきとか言う人がいるけど、日本とアメリカじゃ、いろいろと事情が違ってくるのでそれは一概には言えない。

アメリカは連邦制で外交や防衛などを除いて、多くの立法・行政が州レベルで行われているので、州議会議員の数を加えるとイギリスなどの国々と同程度の議員数になる。

あとは前述した秘書の問題。秘書を雇える数が日本とアメリカでは圧倒的に違うので日本もアメリカみたいに議員を減らしてもOKとはならない。

国会議員を減らして浮いたお金で給付金を配る

この議員定数削減で、どの程度の歳出削減につながったのか?働かない国会議員をクビにして、その金を別のことに使えと言う人もいる。

では、議員定数を減らして浮いた金額を国民に給付金として配った場合、どうなるのか?

これまで実際に削減してきた51議席をもとに算出する。過去の国会答弁で国会議員1議席当たり7,500万円必要だとされている。

  • 削減数:51議席
  • 議員一人あたりの経費:7,500万円
  • 51議席×7500万円=年間38億円の削減

一般庶民の家計(お財布)の感覚だと38億円は大層な額とも思えるが、国家予算の規模からすれば大した額ではない。

38億円÷1.2億人=約32円

出典・参考:れいわ新選組おしゃべり会のスライド

この38億円を国民一人ひとりに給付すると → 年間約32円も貰えることになる。あまりの金額の少なさに思わず目をこすって二度見しちゃったよね。

これは金額の問題だけでなく、つぎのような弊害につながったり、資本家目線の議論だけが取り上げられ、国民目線の議論が潰されたりするから議員の削減は悪手だ。

  • 民主主義の破壊
  • 権力の固定化
  • 腐敗政治の延命
  • 国民生活の底上げに必要な経済政策は無視

あとがき

本当は議員定数削減なんかより、企業団体献金の禁止とか消費税減税・廃止の方が喫緊の問題だよね。

確かに、これまでずっと仕事しない国会議員を選んできたのは国民だし、政治に興味ないとか、投票なんて面倒くさいから行ったことないとか寝ぼけたこと言ってる国民にも問題はある。

それと合わせて、金と組織票で飼われているような「資本家・組織・団体」だけを見ているヒラメのような議員たちにも問題がある。

少し前に「劣等民族がうんぬんかんぬん」みたいな話題もあったけど、売国議員も日本国民。売国奴に投票しちゃうのも日本国民。この国の病の一つ。さてどうしたものか。