アメリカ史上、最悪の連続殺人鬼「ゾディアック」。
この連続殺人鬼の特徴は、警察やメディアに犯行声明文を送りつけることだった。
また、犯行声明文の一部には難解な暗号が使われており、これまで暗号解読者たちを悩ませてきた。
ゾディアック事件は迷宮入りしたコールドケース(未解決事件)であり、いぜんとして犯人は捕まっていない。
しかし、2020年12月11日、51年ぶりに暗号の1つを解読することに成功したという発表があった。
この記事では、以下についてお送りする。
- ゾデイアックの暗号解読に成功した直近の報道
- ゾディアック事件のこれまでの概要と真相
アマチュア暗号解読チームが51年ぶりに暗号の解読に成功
カリフォルニアの連続殺人鬼「ゾディアック」の暗号の1つをアマチュアが解読に成功したというビッグニュースが飛び込んできた。
これは、なんと事件から51年ぶりとのこと。
この暗号は1969年にゾディアックが地元紙「サンフランシスコ・クロニクル」に送った「340暗号文」というものだ。
アマチュア暗号解読チームの3人
今回、暗号解読に成功したアマチュア解読チームのメンバーは以下のとおり。
- オーストラリア人数学者のサム・ブレーキ氏
- ベルギー人プログラマーのアル・ヴァンアイケア氏
- バージニア州のソフトウェア開発者のデビッド・オランチャック氏
解読された340暗号文のメッセージ
これまで犯人は新聞社に謎の暗号文を4つ送っているが、その中にはいまだに誰も解読できていない暗号がある。
今回、解読された「340暗号文」のメッセージは、長年NSAやFBI、CIAを悩ませてきた。
この暗号が解読できれば犯人の名前が判明するとも言われていた。
しかし、メッセージ内に犯行の動機や犯人の身元を示すものはなく、犯人逮捕に迫れない警察をあざ笑うかのようなサイコな文章が含まれていた。
「あなた方が私を捕まえようとしておおいに楽しんでいることを望んでいる」
「私のことを扱ったテレビ番組に登場した人物は私ではない」
「なぜなら私はガス室を恐れていないからだ」
「ガス室送りになれば一層早く天国に行けるので私は捕まることを怖がっていない」
「私はいま十分な数の奴隷を所有しているが他の人間は天国にたどり着いても何も持っていないため死を恐れている」
「私は天国での死後の人生が安楽なものになることが分かっているので怖くない」
メッセージ内に登場するテレビ番組とは、地元テレビ局のトークショーのことだ。
この暗号が送付される2週間前にゾディアックと名乗る人物がこの番組に電話出演していたのだ。
犯人はパラダイスの単語を書き間違えていた
暗号文の文字は大文字で書かれており句読点はなく、英語で「天国」を意味する単語「パラダイス」のスペルを書き間違えていた。
この単純なスペルミスにも意図的な意味があるのかどうか不明だ。
PARADISE(正)
⇩
PARADICE(誤)
340暗号文の解読方法
アマチュア暗号解読チームは自分たちで開発した暗号解読プログラムで解読を成功させた。
この暗号文は左上の隅からスタートして、下の行に移動するたびに右に2文字ずつスライドし、斜め右下に向かって読んでいくというものだった。
そして、一番下の行に到達したら、今度は斜め左上に向かって読んでいく。
オランチャック氏によると、この暗号の仕組みは1950年代に米軍が使用していた暗号化マニュアルによく登場するものだそうだ。
アマチュア暗号解読チームの3人は、1週間前にアメリカ連邦捜査局FBIに解読結果を報告した後、許可が下りるまで公表を控えていた。
ゾディアック事件
ゾディアックは、以下のように恐れられてきたアメリカ史上最悪の連続殺人犯である。
- 奴は怪物
- 人を狩っていた
- 警察は馬鹿にされていた
- 奴の暗号は解読できない
彼は1968年から1974年にかけて37人を惨殺したと主張しており、サンフランシスコでカップルを中心に少なくとも5人を殺害している。
ゾデイアックは捜査陣を挑発するかのような手紙を送りつけ、快感を求め人を殺す。
犯行声明文の中に自分の名前を暗号化して埋め込んでいるというが、奇怪な文字や記号が並ぶ難攻不落の暗号で未解読のままだった。
ゾディアック(Zodiac)の意味
ゾディアック(Zodiac)は、星占いで登場する黄道12星座の「黄道帯」を意味する英単語だ。
犯人が送りつけていた声明文の中に、「私はゾディアックだ」と頻繁に書かれていたので犯人の名として知られるようになった。
ゾデイアックの特徴
- 身長・・・190センチ
- 体重・・・90キロ
- 白人
- 傷痕やタトゥーなどの目立った特徴はナシ
プロファイリングでは、上記のとおり大柄な男のようだ。
ゾディアックマーク
上記が「ゾディアックマーク」と呼ばれるゾデイアックのシンボルマークである。
送りつけられた犯行声明文の最後に描かれていた。
ケルト十字に酷似しているという。
ゾデイアック事件の概要
ゾディアックの犯行は1968年から1974年までで4件起きていて、5人が殺害されている。
この一連の事件を見ていく。
①未成年カップル射殺事件
1968年12月20日、17歳の男性と16歳の女性がサンフランシスコ近郊のハーマン湖で射殺された。
②10代20代のカップルが駐車場で銃撃される
1969年7月4日には、19歳の男性と22歳の女性のカップルがヴァレーホという都市の駐車場で銃撃された。
女性は搬送先の病院で死亡し、男性は重傷だったが一命を取り留めた。
翌日の7月5日、ヴァレーホ市警に「前述の2件の事件とそれ以前の殺人はいづれも私がやったものだ」と男性の声で犯人しか知りえない情報を含む電話があった。
捜査員が現地に駆け付けると、被害者の2人が発見された。
③20代カップルが覆面の男に襲われる
1969年9月27日、20歳の男性と22歳の女性のカップルがベリエッサ湖で覆面の男にナイフで襲われた。
この事件も犯人の電話で発覚した事件だった。
ナパ警察が犯行現場に駆け付けると、車内でメッタ刺しにされたカップルを発見する。
男性は助かったが、女性は2日後に亡くなった。
助かった男性の証言によると、犯人は黒いフードを被り、胸には後に有名になる「ゾディアックマーク」のデザインが入っていたという。
④タクシー運転手が射殺される
1969年10月11日、29歳のタクシー運転手がサンフランシスコ郊外で射殺され財布を奪われる事件が発生。
事件から10日後、ゾディアックは運転手の血が付いたシャツの切れ端を地元の新聞社に送りつけた。
また、警察署に電話をかけ、ある弁護士を名指しして「弁護についてくれるなら自首する」、「テレビ番組で電話出演する」と発言した。
その後、テレビ番組では指名した弁護士出演のもと、ゾディアックと思しき者が電話出演するが、ゾディアックが自首することはなかった。。
その他のゾディアック騒動
殺人事件ではないが、その他のゾディアックに関する騒動もあったようだ。
ゾディアックからの最後の手紙
1974年、ゾディアックからの最後の手紙がサンフランシスコ市警に届く。
手紙には、「私は今まで37人を殺害している、事件を新聞でいっそう大きく取り扱わないと、もっとスゴイことをやる」と記されていた。
しかし、その後、新たな殺人事件が発生することは無く、これを最後にゾディアックからの連絡は途絶える。
模倣犯によるイタズラ
1978年4月、新聞社へ「自分は復活した」とゾディアックを名乗る人物から手紙が送られてきた。
しかし、ここでも新たな事件は発生せず、ゾディアックの模倣犯によるイタズラではないかと見られている。
逮捕された殺人容疑者がゾディアックと疑われる
1981年、連続殺人で逮捕された容疑者がゾディアックなのではと疑われたが、事件の手口や物証がゾデイアック事件とは違っており、別人と判明した。
ゾディアックの暗号
1969年8月8日、カリフォルニアの高校教師ドナルド・ハーデン氏とその妻が新聞社に送られてきた408個の記号でできている「408暗号文」の解読に成功する。
その暗号文には、
「森で動物を殺すよりも遥かに楽しいので人間を殺すのが好きだ」
「人間は一番危険な動物だ」
「女とセックスするよりも人間を殺す方が最高に興奮する」
「私は死んだあと天国でよみがえり殺した人間は私の奴隷になる」
などと書かれていた。
この408暗号文でもパラダイスのスペル「PARADISE」は「PARADICE」と間違って記述されていた。
ゾデイアック事件の真犯人と思しき人物たち
ゾディアックの正体として疑われている人物は5人。
その中でも有力だとされている3名をご紹介する。
①アーサー・リー・アレン
1990年のニューヨークでゾデイアック事件を模倣した連続殺人が発生した。
結局、犯人は逮捕されなかったが、この事件の容疑者として、アーサー・リー・アレンという人物が浮上した。
彼はIQ136を誇り、死後に犯行を裏付ける証拠品が見つかったというが、手紙についていた唾液のDNAを鑑定した結果、無実が証明されている。
②デニス・レイダー
2015年、フロリダの元保安官代理キンバレー・マグガースは「BTK絞殺魔」として知られる連続殺人鬼デニス・レイダーがゾディアックであるという著書を発表している。
彼は、Bind(緊縛)、Torture(拷問)、Kill(殺人)の頭文字をとって「BTK」と名乗っていた。
③アール・ヴァン・ベスト・ジュニア
2014年、ゲーリー・スチュワートという人物が出版した本「殺人鬼ゾディアック 犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実」の中で、「自分の父親がゾディアックの真犯人である」と語っている。
ゾディアックの正体はアール・ヴァン・ベスト・ジュニアなのか?
ゲーリ―氏の父・ヴァンがゾディアックな理由
ゲーリ―・スチュワート氏は父・ヴァンがゾディアックである理由として、以下のことを挙げている。
- 犯人のモンタージュ写真が父親にそっくり
- 日本で暮らした経験があり犯行声明文に「ミカド」からの引用文がある
- 祖父の影響で父も子どもの頃から暗号を作って遊んでいた
- ゾデイアック事件の被害女性たちがゲーリー氏の母親に似ている
- ゾディアックと父の指紋の傷が同じ
ゲーリー氏の祖父は海軍従軍牧師で、戦前まで日本の青山学院を本拠地として宣教活動していたそうである。
また、父・ヴァン氏は両親と日本で暮らした経験があり、「ミカド」の1節をよく口ずさんでいたと親戚の証言があるのだ。
戦時中、暗号解読の任務に就いていた祖父の影響で父も暗号を作って遊んでいたという。
ゲーリ―氏は父ヴァンと母ジュディの間に生まれるが捨てられる
ゲーリ―氏は、父・ヴァンが27歳、母・ジュディが14歳で結ばれたのち、生まれた。
その後、ヴァンがジュディの外出中に息子・ゲーリ―を捨てたことに驚嘆したジュディはヴァンの元を去った。
そして、ゲーリ―は養父母のもとで健全に育てられた。
母・ジュディの再婚相手はサンフランシスコ黒人社会の伝説的人物
成人した母・ジュディは、黒人警官のロテアと再婚する。
ロテアは黒人差別がひどい時代の中、異例のスピード出世を果たし、黒人初の殺人課の刑事に抜擢された。
その後、政界に進出し、サンフランシスコの黒人社会において伝説的な人物となった。
サンフランシスコ市警の妨害と圧力
ゲーリー氏は再会した実母・ジュディとともに、父・ヴァンの足跡を辿ることにした。
ゲーリー氏は父・ヴァンの捜査協力を依頼すると、一度はこころよく了解してくれたサンフランシスコ市警から捜査の妨害と圧力を掛けられたというのだ。
なぜ、サンフランシスコ市警の態度が急変したのか。
ゲーリー氏は、妨害され圧力を掛けられた理由として、ある疑いをもっている。
サンフランシスコの黒人社会の伝説的人物「ロテア」の妻・ジュディが連続殺人鬼ゾディアックの前妻だったとしたら、それは決して世に出てはならない不都合な真実なのだ。