【韓国政治と陰謀論⑧】李在明大統領と「戒厳令=内乱」陰謀論
第21代大統領、李在民は戒厳令騒動の渦中にあった尹錫悦前大統領の弾劾を主導した人物である。
だが、この時すでに李在民自身も前科四犯であり、その他にも五件の刑事裁判を抱えていた。これらの裁判で有罪になれば公民権停止により、大統領選に出馬できなくなる。
それが理由なのかは分からないが、とにかく一刻も早く尹氏を大統領の座から引きずり下ろしたかったみたいだ。
李在民大統領と「戒厳令=内乱」陰謀論
李在民や「共に民主党」は、尹大統領を弾劾、罷免するために大統領は内乱を企てたと主張し、「戒厳令=内乱」陰謀論をでっち上げようとした。
戒厳令の目的は内乱であり、内乱の目的は権力の永続的簒奪であるというものだ。だが戒厳令は憲法に記された大統領の権限であり、それだけでは内乱行為に当たらない。
そのため「権力の永続的簒奪を目的として内乱を起こすために戒厳令を宣布した」という陰謀論で弾劾に持っていこうとしたのだろう。
内乱罪を撤回
しかし、流石に戒厳令の目的が内乱だったということを証明するのが難しかったのだろうか、内乱罪の立証を撤回している。
野党が無理を承知で「戒厳令=内乱」にこだわっているのは韓国人の脳裏に「クーデター(内乱)に対する嫌悪」が刻まれているからだ。
韓国では建国以来、二度のクーデターが起きている。それは、1961年の朴正煕による「5.16クーデター」と1979年の全斗煥による「12.12クーデター」だ。
内乱と戒厳令に対する嫌悪感
戒厳令は、「朝鮮戦争のような国家存亡の危機」に際して発せられることもあれば、「独裁的な政権が反政権運動を鎮圧するため」や「政権を延命するため」に宣布されたこともある。
そのため韓国人はクーデター(内乱)だけでなく、戒厳令に対しても強い嫌悪感を持っている。野党は尹大統領の戒厳令をクーデター(内乱)と結びつけることで、尹大統領を追い落とせると踏んだのだろう。
尹大統領と不正選挙陰謀論
かつての朴槿恵大統領と同じ道を辿るかのように、尹大統領の政治生命は終わったかに思えたが、今回は少し違った。
野党と与党で互いの陰謀論が展開され、世論を二分したのだ。
- 野党:戒厳令=内乱=政権維持・延命の陰謀論
- 与党:不正選挙陰謀論、従北陰謀論
当初は野党側が優勢だったが、途中から与党保守派勢力が「不正選挙陰謀論」や「従北陰謀論(李在民は北朝鮮のスパイ)」を主張し始めた。
さらに、そこに「尹大統領は支持してないが李在民も嫌い」という中道勢力も加わり、世論は拮抗した。
ただし、不人気な尹前大統領が憲政秩序を乱したことは事実だし、前科持ちの李在民大統領が親北朝鮮的な政治姿勢を持つ人物であることも事実だ。
だから、両派の唱える陰謀論はそれなりの説得力があった。すべてがデタラメではなく、それなりの真実も含んでいるのが韓国政治の陰謀論の特徴だった。
そして、韓国政治の陰謀論は、これまでのような「政権延命の道具」から「政治的な要求を実現させるための手段」へと進化した。政局が変化すれば、新たな陰謀論が唱えられ、またデモや集会に発展するかもしれない。
参考:『社会分断と陰謀論 虚偽情報があふれる時代の解毒剤』/文芸社

