かつては、神として崇められながらも、「ユダヤ教」や「キリスト教」が勢力を広げていく過程で悪魔と見なされるようになっていった者たちがいる。
ユダヤ教や、そこから派生したキリスト教は「ヤハウェ」を唯一絶対神としていた宗教である。
それゆえ、異教の神を決して認めず、それらすべてを邪悪な存在と見なしていた。
次の4人は、かつて異教の神であったと言われる悪魔たちだ。
- ベルゼブブ
- ダゴン
- アスタロト
- アバドン
もともとは神だった悪魔たち
①ベルゼブブ
ベルゼブブは、サタンやルシファーに次ぐ、強大な力を持つ悪魔として有名である。
彼は、もとは地球海沿岸のカナン地方やフェニキア地方一帯で信仰されていた神だった。
また、旧約聖書「列王記」に登場するペリシテ人の町エクロンで信奉された神「バアル・ゼブル」とも言われている。
異教の神から悪魔にされてしまったベルゼブブは、巨大な蠅の姿をしていて「蠅の王」と呼ばれていた。
だが、ベルゼブブは本来ヘブライ語で
- 高所の神
- 天国の王
を意味する「ベルゼブル」という言葉が起源になったとされている。
ユダヤ民族がカナンやフェニキア地方を支配するにつれ、
↓
ベルゼブブ(糞山の王・蠅の王)
という言葉に改悪されて、排泄物にたかる蠅たちの王と見なされるようになった。
②タゴン
神から悪魔になってしまった2人目は「タゴン」。
彼は上半身は「人間」で下半身は「魚」という半魚人のような姿をした悪魔である。
タゴンは、もともとカナン地方南部に住んでいたペリシテ人が信仰していた「漁業」と「農業」の神だった。
タゴンはユダヤ民族の英雄サムソンに神殿を破壊されたことで、神としての力を失ってしまい、悪魔になってしまったのだ。
一説では、神殿崩壊後にタゴンは神ヤハウェにより地下世界に閉じ込められたなんて話もあるようだ。
③アスタロト
ベルゼブブやタゴン以外にも、もとは異教の神であった悪魔は多いと聞く。
アスタロトもその中の1人だ。
アスタロトは、別名
- 地獄の大侯爵
- 西方を支配するもの
と呼ばれる有力な悪魔の1人と見なされている。
悪魔アスタルトの特徴は以下のようになっている。
- ドラゴンにまたがって移動する
- 毒蛇を握りしめている
- 契約した人間に過去と未来の知識を与える
- 吐く息を吸った者は死ぬ
そんな悪魔アスタルトの正体は、セム族に信仰されていた「豊穣の女神アシュタルテ」だと言われる。
この女神の名は、以下のように登場する神話によって変わる。
- メソポタミア神話・・・豊穣・愛欲の女神イシュタル
- ギリシャ神話・・・美の女神アフロディーテ
ところが、そんな美しい女神もユダヤ・キリスト教が浸透していくにつれて、醜悪な悪魔となっていった。
④アバドン
アバドンは、ヘブライ語で
- 破壊の場
- 滅ぼす者
- 奈落の底
という名を持つ悪魔である。
新約聖書「ヨハネの黙示録」にも登場する奈落の王で、以下のような特徴がある。
- 巨大なイナゴの姿・馬に似た姿をしている
- 翼をもつ
- サソリの尾をもつ
「最後の審判の日に天の第五の御使いが吹くラッパの音ととに出現する」と黙示録には記されている。
しかし、アバドンの別名は「アポルオン」とも言い、この名はギリシャ神話の太陽神アポロンから来ているという説も存在する。
偉大な太陽神もユダヤ・キリスト教にとっては、単なる異教の神で邪悪な存在になってしまうのだろうか。
まとめ
いつの時代も歴史は権力者の都合の良いように書き換えられる。
きっと、宗教においても同じことが行われていたのだろう。
その時代に勢力を拡大し、力を持った一神教の宗派が異教の神をことごとく悪魔に書き換えていったというのが天使と悪魔の真相な気がするのだ。