ビートルズの解散後、ジョン・レノンは「想像してごらん」のフレーズで有名な『イマジン』を発表すると、生活拠点をアメリカへと移した。そして、心に闇を抱えていた男の凶弾を受け、この世を去った。
ある者たちにとっては、平和活動家として世界に影響力を持つジョン・レノンの存在は脅威だったに違いない。
一部の疑り深い者たちは、この射殺事件が単なる狂人の仕業などではなく、巨大な政治的策略なのではと考えた。
世の中もだいぶ物騒になってきている昨今、反戦を訴え、平和の象徴となった人物ジョン・レノンの暗殺事件を振り返り、その犯行の裏側の存在について想像してみようと思う。
- ジョン・レノン暗殺事件と死因について
ジョンレノン暗殺事件の概要
ジョンレノン暗殺事件の概要 | |
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日時 | 1980年12月8日22時50分ごろ |
殺害現場 | 高級集合住宅ダコタ・ハウスの玄関前(アメリカ、ニューヨーク市) |
犯人 | マーク・チャップマン(Mark David Chapman) |
内容 | チャップマンは夕飯を終えて帰宅しようとしたジョンレノンを射殺 |
動機 | 殺害の動機はジョン・レノンを殺して有名になりたかった |
葬儀 | 12月10日、ジョン・レノンはニューヨーク州ウエストチェスター群のファークリフ墓地で火葬され、遺灰はヨーコに託された(享年40歳) |
ジョン・レノンは誰が殺した?
ジョン・レノンを殺したのは「マーク・チャップマン」という男だ。
ニューヨークのセントラルパーク西側の72番通りにジョン・レノン家族が暮らすダコタ・ハウスはあった。
事件当日の夜22時ごろ、ジョンはヨーコと近所のレストランへ夕食に出かけ、ダコタハウスに帰宅したところをチャップマンに銃撃された。
ジョンがダコタ・ハウスに住んでいることは有名で、アパートの玄関付近で多くのファンがサインや握手などを求めジョンを待ち伏せするのが日常的になっていた。
実はこの事件の約1年前の1979年10月、チャップマンはこの場所に一度訪れており、持参したジョンのアルバム『ダブル・ファンタジー』にサインをもらっている。
しかし、この時は計画を実行せずにハワイに帰国したという。
ジョン・レノンはどこを撃たれたのか?
チャップマンは、ジョン・レノンに後ろから声をかけ、約3メートル離れた場所から「5発」の弾丸を発射し、そのうち4発が命中、複数の銃傷による出血性ショック(出血多量)で死亡した。
- 1発目・・・頭部付近をかすめたが命中せず、ダコタ・ハウスの窓に当たった
- 2,3発目・・・背中左側に命中したが、1発は貫通し胸部から外へ
- 4,5発目・・・ジョンの左肩を貫通して体の外へ
背中の左側に撃ちこまれた弾丸2発のうち、1発は心臓のそばの大動脈に当たり体内に留まっていた。
この時、チャップマンが使用した拳銃は、チャーターアームズ社製のアンダーカバーというリボルバー式(回転式)の銃で装弾数は5発だった。
マーク・チャップマンとは
マークチャップマンとは | |
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生年月日 | 1955年5月10日生まれ(66歳) |
出生地 | テキサス州フォートワースで生まれる |
配偶者 | 妻は日系アメリカ人のグロリア・ヒロコ・アベ |
現在 | ニューヨーク州のウェンデ刑務所に現在も服役中 |
刑罰 | 無期懲役 |
特徴 | 運動は苦手だが頭脳は明晰でIQ120 |
愛読書 | サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』 |
マーク・チャップマンの生い立ちや不思議な都市伝説については以下の記事で。
チャップマンに関する不審な点
チャップマンは、「有名になりたくてジョン・レノンを殺害した」と仮釈放の申請時に答えている。
だが、のちの彼の不審な言動や行動などから、この主張どおりの「目立ちたがり屋のおバカさん」では無いと考える人もきっと多いはずである。
アパートのドアマンは元CIAエージェントだった
アパートのドアマンがチャップマンから銃を払い落し、「おまえ、何をやったのか分かっているのか?」と声をかけると「はい、僕がジョン・レノンを撃ったんです」と答えた。
彼は犯行におよんだ後も落ち着いていて、逃げる素振りも見せずに現場に留まり、大好きなサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読みながら警察の到着を待っていたようだったという。
ちなみに、このとき「ダコタ・ハウス」のドアマンを務めていたのは、元CIAエージェントのホセ・ベルドモという人物。
チャップマンは事件後にインタビューを断り続けていた
チャップマンは念願が叶って有名になれたのに、事件を起こしたあと60回以上もインタビューを断りつづけた。
これまでに一度だけインタビューを受けたことがあったが、それは2003年10月に仮釈放申請が却下された後の事である。
そのインタビューでは多くの犯罪者に見られる「自分の武勇伝を自慢げに語る」といったこともなく、ただひたすら刑務所から出してほしいと懇願するばかりだった。
刑務所から出たくないと言っていたと思ったら今度は出してくれと懇願したり、有名になりたくて人を殺した人物がインタビューを断り続けるというのも何だか不思議な話である。
銃を所持していたが空港の手荷物チェックを2度もすり抜けていた
チャップマンは凶器となった「銃をハワイで購入」して飛行機に乗り込み、主要空港の金属探知機を2度に渡ってすり抜けているが、これも不可解な点の一つである。
1960年代後半からハイジャックが頻発したため、その防止対策として空港での手荷物検査、および金属探知機でのチェックは強化されていった。
だから、ハワイからニューヨークまで銃を持ったまま華麗にスルーは考えづらいのだ。
アンダーカバーという銃はプラスチックで出来ているとでもいうのだろうか。
ちなみに、銃の名前のアンダーカバーとは「潜入捜査・おとり捜査」を意味する。
ジョンレノン暗殺の黒幕説
公式にはジョン・レノンを殺した犯人はマーク・チャップマンということになっている。
しかし、ケネディ大統領を暗殺したオズワルドしかり、事件は実行犯だけによるものではなく、計画を立案し、陰で糸を引いている者が存在する可能性もある。
この事件の黒幕説は次のようになっている。
- FBI説
- CIA説
- 軍産複合体説
- 悪魔の仕業説
- キリスト教原理主義者説
①FBI説
FBIの初代長官ジョン・エドガー・フーヴァーは、ジョン・レノンを嫌っていた。
ニクソン大統領時代にその首席補佐官にジョン・レノンをつぶしてアメリカから追放する手助けを頼んだという噂も存在する。
1970年代、FBIはジョン・レノンを徹底的にマークしており、アメリカ国籍を取得できないよう妨害していたという。
また、ジョン・レノンに関する資料のほとんどが機密扱いなのはイギリスの諜報機関の情報と関連があるかららしい。
ジョン・レノン暗殺の陰謀があったとしたら、その計画にFBIが関与していた可能性は否定できない。
②CIA説
チャップマンはCIAとつながりの深い警備会社に勤めていた。
また、彼は犯行時に催眠術にかかっていたのではという噂も存在する。
CIAといえば、かつて実際に存在した洗脳実験「MKウルトラ」で有名だ。
もしかしたら、チャップマンもマインドコントロール実験により殺人犯に仕立てられていたのかも知れない。
そういえば、ジョン・レノンの住んでいた高級アパート「ダコタ・ハウス」のドアマンも元CIAのエージェントだった人物がつとめていたが、それもこの事件と何か関係があるのだろうか。
③軍産複合体説
アメリカはジョンの亡くなった翌年からレーガン大統領の時代に突入すると、好戦的な外交政策や米軍拡大のために予算増大計画を打ち出した。
もし、ジョン・レノンが生きていたら、このような政策に対して彼の支持者たちから反対運動が起こる可能性もあっただろう。
1960年代のベトナム戦争時のように若者たちが暴動を起こすことを恐れ、右派活動家や戦争により利益を得ている軍産複合体の者たちがジョンの口封じを企んだのではと噂する論者たちもいるのだ。
④悪魔の仕業説
ジョン・レノンはダコタ・ハウスの外で射殺されたが、何を隠そうこのアパートの外観は反キリストの悪魔の誕生を描いたロマン・ポランスキー監督のホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』の撮影に使われた場所なのだ。
悪魔との関連はそれだけではない、ビートルズの楽曲を自身のゆがんだ欲望に利用していたカルト教団の指導者チャールズ・マンソンは儀式と称してポランスキー監督の妻であり女優だったシャロン・テートを殺害している。
かつて、ジョン・レノンは「ビートルズはキリストよりも人気がある」と発言し物議を醸したり、名曲『イマジン』の歌詞には以下のように無神論者や共産主義者とも取れるような誤解されやすい表現もある。
- 天国も地獄も存在しない
- 宗教もない国境もない
- 世界はひとつ人類みな兄弟
チャップマンはジョン・レノンが反キリストであると信じていたという。
このような不気味なつながりから、チャップマンは悪魔にとり憑かれて犯行におよんだとオカルティックな説を唱える者もいるのだとか。
⑤キリスト教原理主義者説
ジョン・レノンが反キリストだと考えていたのはチャップマンだけではないという。
ジョンが「神より偉大な」という言葉を使うようになってからというもの、アメリカのキリスト教原理主義者は元ビートルズのメンバーは闇の勢力であり、以下を広めてアメリカの若者を堕落させようとしていると信じていたという。
- 愛の福音
- ドラッグ
- ロックンロール
ジョンが音楽活動を休止し、主夫となり家庭と育児に専念していた時期は良かったものの、ふたたび表舞台に戻ってくることを知った時、主の忠実なるしもべたちは恐怖したのかも知れない。
あとがき
世の中には今も昔も変わらず、誰かを踏みつけて自分たちの醜悪な欲望を叶えようとする輩が存在する。
そのような輩は自分たちの脅威や障害になりうる人物を計画的に排除すると考えられるのである。
また、事件が起きたのがジョン・レノンが正式にアメリカ国籍を取得する直前だったというのもただの偶然なのだろうか。
この事件が計画的に仕組まれたものだとするなら、想像力のはげしく欠如した者たちの仕業に違いない。