【韓国政治と陰謀論①】戦後韓国の「信託統治」陰謀論
現在、韓国では旧統一教会をめぐる問題で持ちきりだ。韓鶴子総裁の逮捕報道により、教団の政治や社会への影響力が改めて注目を浴びている。
また、信教の自由や宗教団体の活動、市民の宗教、政治倫理の観点からも議論の広がりを見せていて、韓国国内では教団への批判・監視の声も強まっている。
日本国内でも、旧統一教会をめぐる問題(献金・霊感商法・政治家との関係など)が大きな話題になっている。東京地裁が教団の解散命令を出すなど、法的な対応が少しずつ進んでいる。
だが宗教アレルギーの強い国民からしてみれば、そのスピード感のなさに焦れったさを感じている人も多い。
SNS上の肌感覚だけで言うなら、日韓ともに教団への批判の声は最高潮を迎えている。2025年9月時点でのおもな疑惑としては、次の3点。
- 政治家・元大統領関係者への賄賂疑惑
- 教団トップの韓鶴子総裁への関与と責任追及
- 教団と前政権・保守勢力との癒着疑惑
前置きが長くなってしまったけれど、旧統一教会問題のまっただ中にいる尹前大統領も陰謀論に翻弄された政治家の一人だった。
現代韓国の政治と歴史は、もはや陰謀論抜きに語ることが出来ないかもしれない。これから8つの記事で、これまでの韓国政権と大統領に大きな影響を与えたとされる陰謀論を紹介する。
- 戦後韓国の「信託統治」陰謀論
- 李承晩大統領の「法殺」陰謀論
- 朴正煕大統領の陰謀論「民生学連事件」と「人革党再建事件」
- 全斗煥大統領と政権奪取の陰謀論
- 李明博大統領と「狂牛病」陰謀論
- 朴槿恵大統領と「タブレットPC」陰謀論
- 尹錫悦大統領の「不正選挙」陰謀論
- 李在明大統領と「戒厳令=内乱」陰謀論
戦後韓国の「信託統治」陰謀論
まずは戦後の韓国で広まった「信託統治」の陰謀論から。1945年末、日本の植民地支配から開放された韓国では「米・英・中・ソ」の信託統治をめぐり「ソ連が朝鮮半島の信託統治を企んでいる」という陰謀論が広まった。
信託統治は、国連の信託を受けた国がある特定の国(が将来独立できようになるまで)を統治することだが、この陰謀論を信じてしまった朝鮮人が「信託統治の反対運動」を繰り広げ、それが「誤報」だと分かった後も左右対立の火種になっていた。
というのも、共産主義者はソ連を支持して「信託統治賛成」を主張し始め、民族主義者らは左派を売国奴と呼び、「信託統治反対」を唱えたからだった。
分断国家と朝鮮戦争
その後、米ソ対立もあり信託統治は実現しなかったが、1948年には朝鮮半島は南北に分断され、「大韓民国」と「朝鮮民主主義人民共和国」という2つの国家が誕生した。
1950年6月には朝鮮戦争が勃発し、のちに2派の勢力による戦いは3年も続いた。
- アメリカを中心とする国連軍
- 北朝鮮・中国義勇軍を中心とする共産軍
1953年には停戦になったけど、すでに韓国人の脳裏には「北朝鮮に対する嫌悪」や「共産主義に対する恐怖」が刻みつけられていた。
以後、韓国の歴代政権は「反共意識の陰謀論」を「政敵の粛清」や「反政権運動の弾圧」といった目的達成のため利用していくことになる。
参考:『』/文芸社 (2025/5/15)

