【戦争のプロパガンダ②】敵が一方的に戦争を望んだ

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どの国も「相手が戦争を仕掛けてくるので、それを止めるためには戦うしかないのだ」という矛盾した構図が存在していると本書は指摘する。

「最後の戦争」といわれた第一次世界大戦で痛い目をみたはずの世代は、もう同じ過ちを繰り返さないと思われたが。

この記事では、アンヌ・モレリ著「戦争プロパガンダ10の法則」の「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」から各国のリーダーやマスコミがどのようなプロパガンダを打ったのか見ていく。

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フランス側のプロパガンダ

第一次世界大戦がはじまる前、ロシアとフランスは同時に動員令を出すと、フランスはドイツからの宣戦布告を待ち、1914年8月4日に次の声明を出した。

「フランスが参戦するのは、非常に不本意でありながら、ドイツ側からの突然、卑劣で陰険な想像を絶する敵意の表明があったからに他ならない」

フランスとロシアの挑発がドイツ宣戦布告の引き金になったことは承知していたはずである。

さらに戦争の原因は、すべてドイツにあると見せかけるために、フランス外交白書は資料の一部を破棄、改ざんし仏露間の協定やロシアの動員令との関連性がいっさい表沙汰にならないようにした。

フランスの新聞「ル・マタン紙」

1914年8月、パリ発行の朝刊紙ル・マタン紙には戦争を讃えるかのような記述が見られた。

「戦争を回避するために必要なことはすべて手を尽くした。だが、それでも戦争が起こるのならば、われわれは大いなる希望をもって戦争を讃えよう」

「この戦争がやむをえないものである以上、誇りをもって戦い抜こう」

第一次世界大戦 参戦の口実

第一次世界大戦前の1914年、ドイツが永世中立国ベルギーに侵攻すると、1839年以来ベルギーの中立を認める条約をドイツが反故(ほご)にしたとフランスは主張した。

だが、1911年の時点でフランス軍は最大限の兵力をベルギーに集中させることを考えており、イギリス軍も1911年以降、ドイツと戦争になった場合は派兵する同意をベルギー軍から得ていた。

だから、1914年8月ドイツがベルギーへ侵攻したとき、フランスとイギリスは派兵の口実ができたとほくそ笑んだにちがいない。開戦を正当化するための口実を探していたところに、相手国が戦争を望んだとなれば国民にも言い訳ができるからだ。

第二次世界大戦 参戦の口実

フランスはチェコスロバキアを救うために、不本意ながら参戦したと主張している。

たしかに、1924年と1925年にフランスとチェコスロバキア間で結ばれた相互保障条約が存在した。この条約はフランスとチェコスロバキアがドイツから攻撃された場合、相互に援軍を派遣するというものだが、条約が無効化した場合は効力を持たないとも明記されていた。

開戦前の1938年の段階で条約はすでに無効化されていたが、フランス政府はその事実を国民に知らせようとせず、それどころか義務によって参戦しなければならない、これは防衛戦争なのだと国民に信じ込ませた。

フランス首相ダラディエの発言

1939年9月2日、3日、フランスはドイツに宣戦布告し、国民動員令を発布すると、ダラディエはフランス国民へ向けて次のように語った。

「われわれフランス人の勇敢な精神は、征服戦争ではなく、防衛にこそ発揮される。脅威を感じてこそ、フランスは立ち上がるのだ」

「かねてより、多くの人が世界平和を求める声をあげていたにもかかわらず、ドイツは、心ある人々の声にいっさい耳を貸そうとしなかった。戦争が不可避である以上、われわれは戦う」

ドイツ側のプロパガンダ

1939年9月3日、イギリスとフランスはドイツに宣戦布告した。

ドイツ側からすれば、これも列強国が先に攻撃を仕掛けてきたということになる。ドイツはポーランドが攻撃したからこそ対抗措置をとり、英仏が宣戦布告してきたからこそ臨戦態勢に入ったと主張する。

ヒトラーはポーランド侵攻前にイギリス外務省に書簡を送り、ポーランド国内のドイツ系住民に対する不当な扱いを告発している。

「ポーランドのドイツ系住民に対する行為は野蛮かつ制裁に値する不当なものである。ポーランドにおいてドイツ系住民の多くは迫害を受け、強制連行されたうえ、非常に残虐な手段で殺される者も出ている。この状況は、主権国家として容認しがたいことである。かくして、これまで中立的な立場をとってきた我が国ドイツ正当な権利を守るため、必要な措置をとらざるをえないことになった」

ドイツ外相フォン・リッベントロップの発言

ドイツ外相フォン・リッベントロップは、この件について1939年9月1日の駐独フランス大使の質問にこう答えている。

「ドイツ側からポーランドを攻撃したことはない。数か月間にわたって、ダンツィヒの経済的封鎖、ドイツ系住民への迫害、度重なる国境の侵害など、われわれを挑発しつづけてきたのはポーランドの方だ。総統はポーランドが自らの非に気づくのを忍耐強く待っておられた。だがポーランドの出した答えはまったく反対のものであった。数か月前から兵を召集していたポーランドが昨日ついに国家総動員令を出したのだ。ポーランドはすでに三回にわたってドイツ領土を攻撃している。ドイツがポーランドを侵略したという見方は誤りだと言えよう」

ヒトラーとルーズベルト大統領

内政やニューディール政策の失敗から国民の目を逸らすために第二次世界大戦に参戦したルーズベルトに対してヒトラーは次のように発言している。

「戦争のごく初期段階からルーズベルトは、国際法に反するありとあらゆる犯罪をおこなっている。(中略)ここ数年、ルーズベルト大統領の耐えがたいほど挑発的な言動にもかかわらず、ドイツおよびイタリアは戦争の拡大を避け、アメリカと良好な関係を保とうと誠意ある努力を続けてきたが、結果につながらなかった。日独伊同盟の条文にもとづき、ドイツとイタリアは対アメリカ戦を支援せざるをえなくなった」

ドイツ大使がアメリカ政府に送った文書

ドイツ大使がアメリカ政府に送った文書では、両国の戦争状態を認めたうえで、その責任はアメリカにあるとしている。

1939年9月3日、英仏がドイツに宣戦布告すると、アメリカは中立でいることをやめ、ドイツ軍の潜水艦を砲撃し、ドイツ籍の商船を拘束したというのである。

「現行の戦闘状態にあっても、ドイツはアメリカ合衆国に対し、国際法に則った態度を保ちつづけてきた。にもかかわらず、アメリカ側は中立を捨て、ついにはドイツに対して臨戦態勢に入った。アメリカ合衆国はみずから進んで戦争状態をつくったのである。(中略)ルーズベルト大統領がかくのごとき状況をみずから招いた以上、われわれドイツも今後アメリカに対し戦闘状態に入ることを通告する」

NATOのプロパガンダ

1999年、NATOのユーゴスラビア空爆に際して、欧州諸国の政治リーダーたちは、各国の憲法で「参戦の決定は国会で行われる」とあるにもかかわらず、議会の決定がないまま攻撃に加担した。

ベルギー国防大臣官房クリスチャン・ランベールは、「なぜユーゴスラビア空爆に参加したのか?」という学生たちからの質問に「NATO加盟国の義務を果したまでだ」と答えていた。

このときユーゴスラビアにいるセルビア人がNATO加盟国を攻撃したという事実はなく、攻撃したのは、主権国家に対して軍事介入したNATO軍のほうである。

世界の敵「サダム・フセイン」

2000年8月2日付、パリ発行の夕刊紙「ル・ソワール紙」のクウェート侵攻の特集記事の見出しは次の通りだ。

「1990年8月2日、サダム・フセインはクウェートから世界に戦いを挑んだ」

民族浄化はフェイク

西側諸国は「ユーゴスラビアがNATOに戦いを挑み、武力による応酬を招いた」と主張し、1999年1月18日のル・ソワール紙では、NATOはユーゴスラビアを攻撃すべきと煽るような言葉が見られた。

「NATOは、シニカルな驚きをもってこの挑発を受けとめた。地球上もっとも強力な軍隊が、いつまでも優柔不断な態度をとりつづけていいのだろうか?」

NATOは当初、セルビア人がコソボのアルバニア人を迫害し、民族浄化をおこなったとして軍事介入したが、のちに欧州安全保障協力機構の国際政治専門家はドイツ政府の内部文書に以下の記述を認めている。

「3月24日、NATOがユーゴスラビア空爆を開始、ベオグラードは、コソボのアルバニア系住民に対する暴力行為でこれに応酬する。だが、空爆が始まる以前、3月24日以前のコソボではユーゴスラビア警察によるアルバニア人への暴力行為がごく限定的に見られただけであり、アルバニア人全体を対象とする『民族浄化』は存在しなかった」

NATOは、欧州諸国の国民からユーゴスラビア空爆の同意を得るため、空爆以前から民族浄化が始まっていたと思い込ませる必要があった。

戦争の責任はすべて敵国にあり、特に、その指導者である人物が原因をつくっていると思い込ませる必要がある。

戦争になったのはサダム・フセインのせいであり、ミロシェビッチが悪いからだ。独裁者で略奪者であり、和平交渉を拒否し、国際法を犯し、世界に喧嘩を売った彼らのせいだと。

あとがき

「自分たちは悪くない、悪いのは相手だ」と皆同じ言葉を口にし、参戦国の指導者たちは国民を説得しようとする。

戦争の責任を全部相手のせいにし、戦争を止めるために戦争するという矛盾を飲み込み、参戦したことを正当化するために第二のプロパガンダを打つ。

敵が一方的に戦争を望んだのだと。

出典:アンヌ・モレリ著『戦争プロパガンダ 10の法則』

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どうも、コウです。
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