【戦争のプロパガンダ①】為政者は戦争をしたくないと言う

世間の話題
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戦争が始まる前、国家や政治家は必ずと言っていいほど、同じ発言を繰り返す。

それが「戦争のプロパガンダ」と言われるものだ。

プロパガンダは1から10へと徐々にエスカレートしていき、世論を誘導、操作し、最終的には戦争へ向けての世論が形成されていく。

  1. われわれは戦争をしたくない
  2. しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
  3. 敵の指導者(リーダー)は悪魔のような人間だ
  4. 我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う
  5. 我々も意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為  におよんでいる。
  6. 敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
  7. 我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
  8. 芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
  9. 我々の大義は神聖なものである
  10. この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である

この記事では、アンヌ・モレリ氏の著書「戦争プロパガンダ10の法則」から「法則①われわれは戦争をしたくない」をご紹介する。

各国のリーダーは戦争を始める前に、どんな発言をしていたのか。

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アンヌ・モレリ著『戦争プロパガンダ10の法則』

著者のアンヌ・モレリ氏はブリュッセル自由大学の教授であり歴史学者。

この『戦争プロパガンダ10の法則』は、モレリ氏が影響を受けたイギリスの政治家アーサー・ポンソンビー氏の著書「戦時の嘘」に示された戦争プロパガンダの10項目を具体的な例をあげ、さらに分かりやすくまとめたものである。

ちなみに、プロパガンダとは…

プロパガンダ(羅: propaganda)は、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った行為のことである。

情報戦、心理戦もしくは宣伝戦、世論戦と和訳され、しばしば大きな政治的意味を持つ。政治宣伝ともいう。

出典:ウィキペディア

われわれは戦争をしたくない

ポンソンビー氏によると、政治家は戦争を始める前や宣戦布告の時に必ずといっていいほど、次の言葉を発するという。

「われわれは、戦争を望んでいるわけではない」

誰しも戦争は怖いし、歓迎すべきものではない。

だから、まずは「平和を愛している」と見せかけることから始まる。

ここからは、世界大戦が始まる前に各国の首脳や政治家たちに見られた「平和主義的な発言」をフランス、アメリカ、ドイツを参考に見て行く。

フランス政府の発言

 

1914年、フランス政府は動員令を発令し、「徴兵は戦争のためではなく、平和を維持するための最善策である」と宣言した。

アリスティッド・ブリアン仏首相の発言

Aristide Briand 2

Former French Prime Minister Aristide Briand (1862-1932) image:wikipedia

第一次世界大戦後の1921年11月、ワシントンでおこなわれた軍縮会議で仏首相アリスティッド・ブリアンは、「植民地戦争」や「ナポレオンやルイ14世のおこなった戦争」、「ヴェルサイユ条約の領土要求」など、これまでのフランスの行いを棚に上げ、次のような発言をした。

「これまでの歴史のなかで、フランス人は一度たりとも帝国主義、軍国主義に走ったことがない。現在のフランスに見られる節度ある外交姿勢は他の戦勝国には決して見られないものである」

連合国が平和について語ったとしても、それほど意外ではないが、枢軸国側もまったく同じことを言っていたとなれば驚く者もいるのではないだろうか。

連合国と枢軸国

連合国:アメリカ、中華民国、イギリス、フランス、ソ連ほか枢軸国に敵対した26か国の国家連合

枢軸国:ドイツ、イタリア、日本など

フランス首相の発言

Daladier

Édouard Daladier image:wikipedia

1939年9月2日、エドゥアール・ダラディエ仏首相は衆議院で開戦を宣言し、これまた植民地戦争を忘れたかのような発言をした。

「他国の領土を侵略するなど、フランスにはありえないことだ」

翌9月3日の「国民動員令」を発令した際にも、平和を維持すると強調した。

「私は最後の最後まで、一瞬たりとも休むことなく、和平のために奔走したと自信をもって申し上げます」

動員令とは

動員令とは、戦時または事変に際し、在郷軍人を召集する命令である。

動員(どういん)とは何らかの目的のために物や人を集中することをいう。現代では、映画やイベントなどにおける集客数の意味でも「動員数」という言葉が使用されている。しかし、元々は軍事用語として使われていた言葉である。

動員は19世紀後半から第一次世界大戦後までの間、全ての主権国家が恫喝や戦争遂行のために準備していた軍事的手段。動員によって軍隊は平時編制から戦時編制に移行し、この時期の軍隊においては動員の目的は兵を召集することにあった。

出典:ウィキペディア

アメリカ政府の発言

FDR in 1933

Franklin Delano Roosevelt, 1933 image:wikipedia

1940年7月の国会において、ルーズベルト大統領はアメリカの軍備を増強するため、多額の予算を投入することを提案し、次のように語っている。

「われわれが戦争を望んでいないことは、全国民はもちろん、世界中の国々に知れ渡っている。われわれは攻撃のために軍隊を動員するのではない。欧州戦争に派兵するのでもない。だが、欧米に対する攻撃があった場合、防衛のための力が必要である」

ドイツ政府の発言

 

第二次世界大戦前夜には、各国首脳から一見矛盾した「平和主義的発言」が多数みられる。

枢軸国ドイツのヒトラーもひたすら「平和」を強調する。

ヒトラーの発言

ヒトラーの演説の中には「平和への意志」という言葉が頻繁に登場する。

1936年、ドイツとオーストリアの間で協定が締結されたとき、両国は次のように宣言した。

「平和維持につとめ、欧州全体の発展に貢献することを目的とし関係を改善していきたい」

チェンバレン英首相との会見時

1938年9月26日、ヒトラーは「チェコスロバキア解体の発端となった政変」についてベルリンの競技場で演説し、イギリスのチェンバレン首相との会見について語った。

「私はチェンバレンに対し、ドイツ国民はただひたすら平和を望んでいると保証した。だが一方でわれわれの忍耐力にも限界があり、譲れない部分があると明言した」

ポーランド侵攻前の演説

ポーランド侵攻の一年前の演説のなかには、ドイツ・ポーランド不可侵条約を理想化するような発言もあった。

「われわれは、この条約こそ、継続的な平和をもたらすものであると確信している。二つの国の国民は隣り合って生きてゆかねばならぬ。大切なのは、両国の政府、両国の理性的かつ先見の明のある人々が、お互いの関係を改善してゆこうという強い意志をもつことである」

駐独フランス大使

ヒトラーは駐独フランス大使にも独仏関係について次のように述べている。

「私は、独仏関係が平和的で良好な状態にあることを望んでおり、そうならないはずはないと思っている。ドイツとフランスの間には紛争の種などいっさい存在しないのだから」

チェコスロバキア解体調停書

1939年3月15日、ヒトラーとチェコスロバキア大統領ハーハの間でチェコスロバキアの解体を決定する調停書が交わされた。

この調停書の文章は次の表現で始まっている。

「中央ヨーロッパにおける、平穏、秩序、和平を目的としてあらゆる努力を惜しまない」

エドゥアール・ダラディエ仏首相にあてた書簡

1939年8月27日、ヒトラーはフランス首相エドゥアール・ダラディエに宛てた書簡の中で平和への意志を表明している。

「軍人としての経験から、私はあなた同様、戦争の脅威を熟知しております。こうした心情と経験をふまえ、私はフランス、ドイツ両国の間に起こりうるあらゆる紛争の可能性を取り除くべく、全力で努力してゆく所存です」

イギリス政府へも書簡を送る

ヒトラーは同じ頃、イギリス政府にも書簡を送り、以下のように平和への意志を表明している。

「ドイツ政府は独英間の理解、協力、友愛を心から望んでいる」

ドイツ国会を召集

1939年9月1日、ヒトラーはポーランド侵攻に際し、ドイツ国会を招集し、ここでも平和主義を掲げ平和維持のための努力を語っている。

「私はこれまで、平和的な方法で状況の建て直しを図ろうと努力してきた。われわれは武力にばかり頼ってきたかのように言われているが、それはまったくのでたらめだ。あらゆる機会をとらえ、私は一度ならず交渉によって必要な改善策を得ようとしてきた。オーストリア、ズデーテン、ボヘミア、モラヴィアとの問題も平和的な解決をみたが、惜しむらくは結果を得ることができなかった。ドイツとポーランドの間に平和的な協力関係を築くためには、方向転換が必要なのである」

あとがき

すべての国家元首と政府が戦争を憎み、平和という言葉を必要以上に繰り出しているのに、なぜ戦争は起こってしまうのか。

この疑問の答えは、戦争のプロパガンダがエスカレートしていくにつれて見えてくるのだろうか。

とにもかくにも、為政者は「戦争をしたくない」と言いながら、その準備をはじめるものなのだ。

出典:アンヌ・モレリ著『戦争プロパガンダ 10の法則』

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